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2004.03.29

バグダッドの青い空

バグダッドブルー

村田信一 講談社
☆☆☆☆

DAYS JAPANという雑誌が創刊された。「世界を視る、権力を監視する
写真中心の月刊誌」らしい。
本屋で見かけて手にとってみたが、昔馴染みの常連だけを相手にした、
やたら入りにくい飲み屋のようで、とても買う気にはならなかった。
表紙が典型だが、「フォトジャーナリズムたるものこうあらねば!」といった、
型にはめ込んだ写真ばかりのように見えたのだ。
ベトナム戦争あたりから形成された「悲惨な戦争被害者」というイメージを
再現しているだけなんじゃないか、と。

バグダッドブルー」はそうした写真のありようとは一線を画す。
たとえば「ホスピタリティー」と題した一枚は、爆発物の被害にあった家を
撮影する著者のために、わざわざ飲み物を用意してきてくれた被害者を
写し出している。本書では被害跡より、そちらの方が優先順位が高いのだ。
もちろん、戦争写真ではお決まりの兵士や爆撃、死体なんかも出てくるのだが、
ひなびた床屋やプールで泳ぐ人、カフェの光景等々、本書ではイラクに住む
人たちの生活ぶりに多くの枚数が割かれている。
つまり、戦争“も”含めた現在のイラクの日常を、著者はフィルムに写そうと
しているのだ、と思う。写真自体も美しく、報道写真のイメージとは異なる。
それらの写真は、私たちがあまり知らないイラクの生活を身近に引き寄せ、
同時にその平穏な生活が突然の爆撃で破壊される理不尽さを伝えている。

イラク戦争で、米国にとって都合よくコントロールされた情報が多く
流通したことは、今さら説明するまでもない。
その一方で、そうではない立場から情報を送り出そうとする人たちがいた
ことも確かなのだが、「悲惨な被害者」ばかりに目がいってしまい、
かえって説得力をなくしてしまったように感じる。
それは伝える人が従来の型にとらわれて、何をどのように伝えるかに
ついて、思考停止に陥った結果なのだろう。
自分の脳内イメージを、わざわざ写真で再現してどうする。
本書にはそんな呪縛から抜け出して、著者が現地を丹念に歩きながら
自分の頭で考え、撮影したイラクの現在が収められている。

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2004.03.27

爆笑夫婦問題のモンダイ

爆笑夫婦問題
 幻冬舎文庫
☆☆☆

今、一番の売れっ子の爆笑問題は、しばらく辛酸をなめた時期がある。
デビューしてからすぐ注目されるようになったものの、所属事務所を
辞めて独立したために、仕事を干されてしまったのだ。
太田は家に引きこもり、田中はコンビニで生き生きと働く…。
そんなところから復活したのは、見かねた太田の妻が徒手空拳で事務所を
立ち上げ、二人をマネジメントし始めたからだった。
本書は爆笑太田の妻にして、所属事務所「タイタン」代表取締役、
太田光代が二人の出会いから現在(出版は2000年)までを記している。

もちろん経営なんてやったことはないから、本を買い込んで勉強しながら
会社設立し、自宅に電話を引くところからスタートしたという。
で、再び波に乗り始めたところで自ら「単独ライブ」を仕掛け、
テレビ番組のレギュラー獲得に結びつけたあたり、大した
マネジメント能力なのである。
爆笑問題の活躍ぶりは、このパートナーの力が非常に大きいことがわかる。

芸人という職業がどうやって成り立っているか興味があったので、思わず
買いこんだ一冊。その意味では面白かったのだけど、うーん…。
臆面もない二人の付き合い方を世間に露出することは、芸人という商売に
とっては、マイナスにしかならないような。
太田が家で歯の浮くようなセリフを自分の妻にかけるのは別にいいけれど、
そいつを世間に出せば芸人・太田のイメージを崩してしまう。

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2004.03.23

仕事場の中心で、売上とさけぶ

机の上に積み上げた資料類が崩れ落ち、復旧に数十分かかっただけでは
おさまらず、すっかりやる気を失って本日は仕事が手につかず終了。
最近は本棚が埋まり尽くし、資料の検索性がなくなって仕事の効率が
悪いことこの上ない。読了済み書籍を押し込んでいる押入れも、もはや満杯。
そろそろ、この部屋を出る潮時のようである。この7月で更新だし。
そういえば、もう5年以上も住み続けているのだなぁ。

では、どこに移り住むか。仕事場と自宅を分けるほどの甲斐性はないから、
仕事と住処の両機能を満たす部屋を探さなければならない。
条件を思いつくまま書き連ねると…
  都心に近い!(取材と打ち合わせのために)
  とにかく広い! (仕事と資料保管のスペースが必要)
  街が面白い! (過ごす時間が長いっすから)
  近所にスタバか、それに準ずる広いカフェがある!(第二の仕事場です)
  日当たりと風通しが良い! (アレルギーなので)
  駅から徒歩圏内! (友人が遊びに来られるように)
  台所が広い! (自炊するので)
  賃料は10万円台まで! (大した稼ぎがないもんで)
  鉄筋コンクリート作り! (本の重さに耐えられるよう)
  住環境が良い! (落ち着いて仕事がしたいっすから)

ちなみに、現在の住居は最寄り駅まで徒歩1分、自由が丘まで10分。
広さ10畳ほどのワンルーム(台所は別)で、家賃は7万6000円。
ただし築30年、エレベーター無し4階建ての4階である。

で、ネット上をうろうろ探してみたところ、妄想は現実に打ち砕かれた。
これなんかSOHO向け物件だそうだが、40~50㎡程度の広さ(1LDKor2DK
ぐらいっすね)に毎月20万円も出せるって、どんな商売をしている
人たちなんだろうなぁ…。

中央線あたりは居心地良さそうだな、と思って調べてみると、この辺も
意外と相場は高いのねん。たとえば、こんな感じ。
Yahooの不動産で、中央線沿線で11万円以下、50㎡以上のマンションを
検索してみたら、国立あたりまで行かないと物件がない。
月々11万円だって決して安くはない。それに礼金2、敷金2、仲介手数料に
前家賃を合わせると初期負担は66万円にもなってしまうわけで、明日をも
知れぬフリーランサーが、東京で仕事場兼住居を持つ負担は重いなぁ。

こう見えても知的生産物を作る仕事だから、バックヤード整備は必要不可欠。
しかし、そのコストをまかなうだけの売上はない。さすれば、どこかで
条件を妥協するか、売上を増加させるか、その両方を行う必要があるわけだ。
うーん、売上増加の妙手ねぇ…。
誰か教えて、えらい人!

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2004.03.21

「自分の仕事をつくる」

自分の仕事をつくる(晶文社)という本を読んだ。
著者は西村佳哲(働き方研究家)。評価は星5つが最高として☆☆☆。

工業デザイナーの柳宗理氏や「サイゾー」の小林弘人氏、天然酵母による
パンづくりで有名な「ルヴァン」の甲田幹夫氏など、優れたものづくりを
している人たちの仕事場を著者は訪ね、その「働き方」について質問し、
考察を重ねていく。
だからといって、それぞれの働き方に関する事細かなレポートを期待した
人は、おそらく失望することになるだろう。たとえば、アウトドア用品の
パタゴニア社をアメリカまで取材に行きながら、広報が語った彼らの
ワークスタイルを右から左に伝えるだけで、それがなぜ成立するかに
ついての質問や分析は行われていない。
他の取材対象者についても同様で、取材が甘い。相手の言葉を受け取るだけ。
それは著者自身も自覚があるようだ。他の著作からの引用も多過ぎるのも、
実にうっとうしい。書き手としてのトレーニングが足りないのは明白だ。
一様にマスプロダクトを否定してかかっている姿勢もいただけない。
我々はマスプロダクトによって、これだけ人口が増えても不自由なく
暮らしているのだから。この点、アマゾンでも激しく批判している人がいた。
好き嫌いを表明するのはいいけれど、それですべてを切ってはいけないよ。

でも、三つ星をつけたのは、考察の面白さと主張への共感からである。
「あるかじめ意味や価値を約束されている仕事など、どこにもない」
結局、価値は自分自身で創り出さなければならない。すなわち、自分の仕事は
自分で創るものなのだ、と私も思う。
 

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2004.03.19

「オレ竜」落合の組織改革その2

落合の方法論について、最近の人事制度や組織改革について知識のある人
なら、そうずれたことをしているわけではないと感じるだろう。それが
優勝にすぐ結びつくかどうかは別として。
一方、野球界の反応を見ると、賛否両論というところか。批判するところは
激しく批判している。ただし、中身のないものが多いけれど。
例えば、こんなの

俺がデスクなら、記者に蹴りをいれるレベルだなぁ。
もちろん、落合を批判しているからじゃなくて、最後の段落、ロジックも
日本語としても成立していない。バントすることが、なんで「言うことと、
やることが違いすぎるのだ」となるんだ? 最初からつまらねえ野球を
するって言っているじゃないか。岩瀬宅を間違えたとの記述も、最初は
笑い話かと思ったら、どうも「情報遮断」に対する批判らしい。アホか。
この話なら、系列誌とのスキマ風をもっと面白おかしく書くべきだし、
関係者のコメントも入れるべきだ。そんな腕も取材力もないのだろう。

もう一つ、例を挙げるとこの辺とか。
去年「阪神とダイエーの優勝を的中させた」金村義明による順位予想で、
中日は4~6位で「まったく評価できない」。
驚くべきはその根拠で「そもそも取材ができへんのやから。落合監督が
気の合う連中しか近くでしゃべらせへんのや」。
お前の取材力不足が理由かい!
ちなみに、一位予想が巨人なのはいいとして、ピッチャーに関する記述が
一切ない。野球評論として、あまりにお粗末なのである。
このレベルで飯を食える解説者市場は、興味深い観察対象になりそうだ。

金村はこうも書いている
「若手もレギュラークラスも白紙メニューで本人任せ。何を考えているのか
わからない」
自分で課題を設定して、自分で試行錯誤しながら「やる」練習と、コーチ
からの命令で「やらされる」練習と、長い目で見てどちらが選手の成長に
つながるか。そういうマネジメント方法や教育方針の重要性が世の中で
認識されはじめていることも、彼は知らないのだろう。

もっとも、選手の自主性に基づいた方針を打ち出したからといって、指示・
命令に従うことしかしらない選手たちがうまく動きはじめるとは限らないし、
機能し始めるまでにはそれなりの時間も必要だ。
クビになる方が早いかもしれない。結局、出来上がった選手ばかり集めた
方がうまくいくのかもしれない。
でも、落合のやり方には夢がある。落合自身がそうだったように、大して
期待されていなかった選手たちが輝き始めたとしたら…。
そして彼らが活躍して本当に優勝でもしたら、後々まで語りつがれる
物語になるだろう。
そんなわけで、今年は中日の新しい試みを応援していきたいと思う。

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2004.03.18

「オレ竜」落合の組織改革

三冠王・落合博満に興味を持ったのは、高校生の頃までさかのぼる。
「人に言われた通りにやって失敗するより、自分の思い通りにやって
失敗した方がいいだろ」と言い放ち、
自分なりのやり方ですごい結果を残しまくる落合の行動、言動に
すっかり参ってしまったのである。
影響を受けまくったおかげで、今じゃ会社を2つしくじり、いつの間にか
フリーランサーになってしまったが(汗)。
野球には昔も今もあまり興味はないけれど、そんなわけで落合の
動向だけは気になり続けている。

で、中日監督就任である。
「どうしてもやりたい仕事ではなかった」
「人がやっているのに私ができないことはない」
などと語り、一部から強い反発を買っているのは相変わらずで、
実に素晴らしい。江本とか、谷沢とか。
著書で監督になったらこんなことをやると、ずいぶん前から書いてたくせに。
テレ屋なんだよなぁ。

昨年秋の就任からオープン戦中の現在に至る期間で、落合がやって
きたことは組織運営の観点からみて、とても興味深い。
・「日本一」宣言(組織目標の明確化)。
・FA・トレードの一年間凍結&現有戦力の10%底上げ&右打者の四番育成
(頑張れば生き残る可能性と目標を選手に与えるとともに、選手への信頼感を
表明している。ただし、「一年やってだめならクビ」という刃物も
言外に突きつけているのだが)。
・キャンプ練習1・2軍合同・ベテランは「放牧」。
(日陰に日をあてる一方、ベテランには自己責任のプレッシャーを与えた)。
・「ドラフトのくじはスカウト部長にひいてもらう」発言
(巧妙にフロントとの責任分担を明確化)
・「勝敗は自分の責任」発言
(自分の責任の明確化=勝敗の責任は選手のせいにしない)
・故障の早期報告義務付け(リスク管理とともに、無理して選手生命を
短くしないようとする、選手の立場に立った配慮)。
・10人ブルペンなど、練習環境の整備(大所帯でも効率よい練習を実現)。

要は合理的に練習できるハード面の整備と、選手のモチベーション向上という
ソフト面の改革を行ったわけである。
一・二軍の別なく練習することで、監督が自分自身でこれまで光の
当たらなかった選手を見る機会(=選手にとっては注目してもらうチャンス)
を作り若手の奮起をうながすと共に、ベテランの危機感をあおり、強制する
ことなしに選手が目の色変えて練習に取り組む状況を作り出した。
オープン戦でもそれぞれ応分に出場する機会を与え、競争を促している。
練習内容を選手に任せ、コーチには余計な口出しをしないよう指示したのは
「命令と依存」から「信頼と自律」の関係へと、チームの組織原理を根本的に
変えようとしているのだと思う。

落合はこれまで選手を目一杯褒め上げはしても、けなすことはしていない。
その根底には、「やればできる」という選手への信頼感があるのだと
思われる。アラ探しばかりする指導者が多い中で、これは大変なことだ。
普通の人は、権力を持つとすぐ使いたがるものである。
昨季、手を抜きまくり、勘違いしまくった谷繁にだけは厳しかったがw

そんな一連の流れを見るにつけ
「組織に属する人びとが、活躍できる環境と機会を与えることに会社は
徹する。人の成長が一番重要なんです」
以前取材した、ベンチャー企業経営者のそんな言葉を思い出す。
人的要素の重要性が高まっている現在、先進的な人事・雇用政策を取る
企業とも、落合の方針は大いに通じるものがある。

ああ眠い。続きは次回に。

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