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2004.04.30

笑える犬の生活

やくみつるを起用する週刊プレイボーイの野球記事に語るべきことなど何も
ないのだが、相変わらず江本と金村がオレ竜に中身のない批判的コメントを
並べるのを見ると、彼らがどんな怨恨を抱いているのかなと想像だけは広がる。

で、金村義明先生の新刊「プロ野球勝てる監督負けるボス」である。
現在の12球団監督の指揮力分析と、過去に自分が関わった監督の実像、
そして将来の監督と目されている現役選手のリーダーシップについて書いた
彼なりの「監督論」という。
類書との違いは、現12球団監督の記述について、割かれたスペースが大きく
異なることだ。全球団分析をやるときはたいてい同じページ数を割くようになる。
「分析」ですから、特定の球団に肩入れしても何だし、ということで。
しかし、本書は阪神・岡田監督が13ページを割り当てる一方、その次に
ページ数が多いのはダイエー・王監督の7ページだから、いかに阪神の扱いが
突出しているかがわかる。日ハム・ヒルマン監督に至ってはわずか2ページ。
あまり興味がないようだ。ちなみに落合監督は5ページである。
これは過去の監督編でも同様で、星野仙一一人に25ページも費やしている。
その次に多いのが仰木彬の8ページ、長島茂雄などの5ページ。
著者の視線がどこに向いているかが、ここに現れている。

まだ未知数の岡田監督にそれほど語る材料があるのかと思って読むと、頁の
多くが著者自身との交遊ぶりとヨイショに費やされている。いや、交遊やヨイショを
書いてもいいのだが、エピソード自体があまり面白くないのと、そこから先に
あまり話が広がらないので読んでいて鼻白む。金村の交遊録などどうでもいい。
一応、分析らしき部分もあるが、主に雰囲気や結束といった抽象的な話が多く、
精緻な戦力分析などは見られない。「論」を名乗るには大ざっぱ過ぎると思う。
星野仙一の項についても同様の傾向だ。
二人への下手くそなラブレターを見せられているように思える。

一方、落合監督については「落合さんほど監督に向かない人はいない」と手厳しい。
その根拠は「徹底的な個人主義者だから」という。
一塁ベース上で「名古屋のマンションを買え」と言われたエピソードを挙げて「金の
亡者か」と失望したと人間性の問題を指摘。さらに鈴木孝政の「ヘッド」の肩書きを
はずしたことから「コーチへの接し方もおかしい」とし、横浜の臨時打撃コーチの結果、
「言い切り癖」などを挙げて優勝宣言の「信憑性には疑問符がつく」と断じる。
あとがきでも「オレ流を通した人間は、二軍選手を含めたすべての人間の気持ちが
絶対にわからない。いやわかろうともしないだろう」と再度批判している。

この落合へのマグマはどこから湧き出ているのかな、という視点で読んでいくと
「岡田さんが会長を務めた時代の労組選手会に『オレは入らない(中略)』とまで
言っていた人が、いざFA権を勝ち取った途端(中略)権利を行使して移籍した」
「中日ナインの間に大きな影響力を残す『星野流』を完全否定するところから
スタートした『落合流』だが(中略)どうにも先のビジョンが見えにくい」
といった記述が手がかりになりそうだ。
要するに、大事な大事な岡田さんや星野さんの敵、というわけだ。評論や分析
ではなく、個人の「好き・嫌い」「敵・味方」を彼は語っているのである。

つまりどうでもいい本ではあるのだが、一つ見逃せない点がある。
「就任直後の秋季キャンプでは『この時期は教えるな』という珍指令」
との記述があるが、本当は「選手が求めてくるまで教えるな」と言ったのであり、
要はこちらから押し付けるな、自分で考えさせろというのが本意だったはず。
その頃のスポーツ新聞を読んでいた人なら、誰でも知っていることだろう。
それを野球評論で食っている人間が知らないはずはない。ということは、これは
事実のわい曲である。モノ書いて食っている人間が一番やってはいけないことだ。
本書には、この手のためにする危うい記述がいくつか見られる。
バラエティで裏話を披露して笑いを取っているだけならいいが、まかり間違って
こういう人に発言力を持たせるようになってはいけない。
本人は発言力をつけて、いずれどこかの監督になるつもりらしいから。

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2004.04.21

行列を創り出すラーメン店

過日、ラーメン不毛地帯、自由が丘に行列のできる店ができたと聞き、
近くを通ったついでに行ってみた。
立地は商店街の裏手にあり、店構えは最近よくあるこじんまりしたレトロ風。
外から店の内部は見えない。
私の前には男一人女二人の若い三人組が並んでいて、入り口に張り出された
雑誌の掲載記事やメニューを見ながら嬉しそうにはしゃいでいた。
どれどれ、と私も見てみると、ここは帆立味の豚骨スープがウリらしい。
他にも二種類の麺を組み合わせた二刀麺やら煮干カレーやら、特徴あるというか
奇をてらったメニューを用意していて、それぞれ上手に能書きが付けてある。
この大大という店、よくマスメディアで取り上げられるせたが屋という
ラーメン屋の経営者が作ったそうである。

ただ、店内から客が何人か出てきたのだが、なぜかすぐ中に入れてくれない。
三人まとめて座れるように調整しているのかね、くだらん気遣いしやがると
心の中で毒づきながら待つことしばらく、今日はいい加減あきらめるかと
イライラがピークに達する直前に、やっと店員に店内へ招きいれられた。
内部はカウンター席と座敷が一室。3人組は座敷に入り、私はカウンターへ。
張り紙によると、ラーメンは一日に限定数以上は売らないという。

この店最大のウリの帆立味豚骨スープは、やや生臭さがあって、あまり
好みではなかったが、特に不味いということもない。こんなもんでしょう。
それより食べている間中不思議だったのは、三席も四席も席が空いているのに
外で並んでいる客をなかなか店内に入れてあげないことだった。
テーブルの後片付けが追いついていないわけではない。
店員の気が利かないのか、不親切なのか…。
どうにも釈然としないまま店を出ると、外に10人ほどの行列ができていて、
あ、そういうことかとやっと疑問が氷解した。
おそらくは行列を長く作るために、意図的に入店を調整してたのねん。

メディアのお墨付きを動機付けに、巧妙に練られた能書きを楽しみながら、
人気店の証しである行列に並んで暇な時間を消費し、能書きを自分の舌で
再確認した後、第三者に「あの店はね~」とうんちくをたれる。
この店は単にラーメンを食わせるだけではなく、こうした一連の楽しみを
サービスとして客に提供しているのだ。その意味では外食店というより、
一種のエンターテイメントビジネスというべきだろう。
ラーメンとしては高めの価格設定も納得だ。
多少、客回転が悪くなったって、一日の販売数の上限も決まっていることだし。
浅はかな考えで不親切だ、などと思い込んでしまって誠に申し訳ない。
また行きたいとは決して思わないけれど。

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2004.04.16

中国的成果主義

大きな本屋でしか見かけないので一般にはあまり馴染みがないが、
リクルートのワークス研究所が「Works」という雑誌を隔月で出している。
その最新号の特集が「中国―競争とマネジメントのダイナミズム」。
中国の人事マネジメントというと、現地で日本企業うまくいってねえな、
という話に終始しがちな昨今であるが、ここでは成果主義を先取りしている
先駆者として中国を位置づけ、現地取材を中心に深く切り込んでいる。

本誌で紹介している中国企業の人事戦略や評価制度を見ていくと、
かつての「鉄飯碗」の面影は見られない。能力の高い者に権限と報酬を与え、
そうでない者は脱落させていく厳しい成果主義的施策を導入しているのだが、
それは非情な仕組みでも単なる結果主義でもなく、人の成長と有為の人材の
獲得に力点が置かれているのが興味深い。
確かに、これらの先進事例から日本の会社が学ぶべき点は大いにある。

欲を言えば、取材先企業がIT関連企業中心になっているが、もっと他の
業種も見てみたい気はする。一応共産主義国家であるから党や組合と
面倒くさいことはないのかなといった興味もあるが、そこまでやると雑誌の
キャパを超え、書籍の世界に入ってしまうか。
ちなみにこの特集、全50ページもボリュームがあり、日系企業と関わりの
ある中国人による座談会や、現地化を進め健闘しているサントリーなど
日系企業の話も入っている。
成果主義を軸にした日中比較論としても読め、なかなか面白い。

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2004.04.11

「国民全員が社長」なわけあるか!

久しぶりに書評です。

イタリア人の働き方 国民全員が社長の国
内田洋子 シルヴィオ・ピエールサンティ 光文社新書
☆☆

怠け者で女ったらしで酒飲んで遊んでばかりで、というイメージがある
イタリア人だが、実は自分にとっての人生の意味を心得ているだけで、
彼ら彼女らは人生を楽しむお金を得るために懸命に働く、という。
本書はそんなイタリア人の中で、「一人で仕事を始め、会社を興し、
実績を作り、名前が知られるようになった」人たちを紹介している。

紹介されるのは「VIPが我先に訪れるイタリア一の靴磨き」や「ヴェネツィア
一の水上タクシー運転手」、「本人の代わりにすべてを決めてくれる
パーソナル・ショッパー」といった個人事業的な仕事から、「世界最高の
ラガー・ビールを造るメーカー」などの零細企業経営者、年商1億ユーロ
(130億円)の「板金プレス業界のリーダー」である81歳の女性経営者等々。

取り上げられる人物はそれぞれユニークで、ビジネスの内容も面白い。
ただ、個人事業から中堅企業経営者、大企業の勤め人まで取り上げている
ため、よく言えばバラエティに富んでいるが、「イタリア人」以外の統一した
切り口がよく見えない。面白ければそれでも構わん、という考え方もアリだろう。
しかし、読後の胸クソ悪さは致命的だ。
たとえば、パーソナル・ショッパーの記事中にこんな記述がある。
「今日、何事もまずは外見ありき。他人は、その人の外見で中身を判断する
ものである。世の中に知られることなく、マスコミに取り上げられる
こともなくひっそりと暮らすのは価値のない人生、と思う人が大半である」
おいおい、正気か…。

登場する人物や仕事を紹介するにも、やれVIP御用達とかVIPでも
なかなか手に入らないとか、そんな表現の仕方がやたらと目に付く。
要するに、書き手のしょーもない価値観がそこに現れているわけだ。
で、肝心のイタリア人ならではの「働き方」の面白さや興味深さは、
あまり伝わってこないし、社会的背景まで知ることなど望むべくもない。
「人口5700万人の国で法人登録が2000万社。国民全員が社長の国・
イタリアの底力」という煽り文句はまあいいんだけど、普通に考えれば
中小零細企業が多くても、経営者より労働者の方が多いはずなわけで、
この数字の裏側には何かあると思うんだが、その点の記述は一切なし。
全員が社長だったら誰を雇うんだ。頼むから、少しは頭を使ってくれ。
安っぽい価値観で、興味深い事実の上っ面を撫で回して台無しにした一冊。

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2004.04.05

頑張れ若造! ただし職場は選べ

朝9時頃、自由が丘のスタバで新聞を読んでいると
「あたしはダンナが好きで結婚したのに、姑はなにかというとすぐ
『○○家は』って家のこと持ち出すの~~~」
などと、ヒマなマダムが大騒ぎで集中できない。おいおい。
こんな時間に優雅にくっちゃべられるのは、家とやらのおかげじゃねーのか。
こっちは新聞読むのに忙しいんだ、ニッカンとか、トーチュウとか。

そんな朝の苛立ちを鎮める微笑ましい記事が、本日の日経の一面に。
「増える採用(下) 若者の能力引き出せ」
この記事によると、コムスンを傘下に持つグッドウィル・グループの
来春採用予定数は、今春の倍近い2050人。介護ヘルパーになる高卒の
採用数は1500人。
その背景には「新入社員の48%が入社3年以内に退社する現実がある」そうで。

コムスンが業績不振で1400人削減したのは、2000年だったか。
切ったり採ったり、お忙しいようで。
ちなみにグッドウィル・グループ単体の従業員の状況を見ると

平均勤続年数2.0年(平成15年6月30日現在)

なんというか、ハロー、コムスン!

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2004.04.04

開幕! 川崎劇場

先週、某売れまくり一人勝ち子供服会社の新人研修を取材してきた。
まだ紙面化されていないので詳細は控えるが、全国から新入社員200名強を
集め、一週間かけ10名ごとのチームに分かれてCM制作を行い、
最終日に発表を行い評価を競うという内容で、はたから見ていると大学の
文化祭のようなノリなのだった。
わざわざお金と時間をかけて企業がこんなことをするには当然目的があって、
その最大の眼目は「一体感の創出」という。社長はこんな風に言っていた。
「ウチみたいな中小企業が勝つには、全員が一丸となる必要がある」
逆に、優秀な人材の獲得が望めない中小企業でも、チームワークの発揮で
充分勝機を見出せる、ということである。

で、川崎の開幕投手である。
獲得してきた張本人が「名古屋のファンに失礼」と激高したのは笑ったが、
なんにせよ、そのニュースを聞いた誰もが?!、と思ったことだろう。落合は
開幕を捨てゲームにしたのか、単なる思い付きか、ウケを取りにきたのか…。
試合後明かされたその答えは、凡人の想像の範疇にはなく、
「このチームを変えるには、三年間けがで苦しんできた男の背中を、
みんなで押す必要があった」。
泣かせる話ですなぁ。

この談話から、落合監督は開幕戦をチーム変革のシンボルに
位置づけたかったのだろうと想像する。
ここで言うチーム変革とは、「一体感の創出」である。
個々が優れた技量を持っていても、個人の間をつなぐものがなければ
チームとしての力は発揮されない。現在のジャイアンツがそのいい例だし、
昨年のドラゴンズもあまりの貧打ぶりに投手陣が切れていたようである。
そこで3年間苦しみ続けた川崎を開幕に投入し、「みんなで後押し」する
状況を作り出し、気持ちを一つにまとめあげようとしたのではないか。
もっとも、背中を押したら本人は奈落の底に落ちてしまったわけだが、
打線と中継ぎ陣の奮起でチーム一丸的勝利を収め、はからずも開幕戦を
チーム変革のシンボルとすることには成功した。
5点取られた後のアレックスのファインプレーや、井上が全力疾走で
内野安打をもぎ取ったあたりは、その現れだと思う。

といっても、やはり川崎の開幕投手など無茶もいいところで、これで負けて
いたらバッシングの嵐が吹きまくっていたことだろう。
それでも平然と実行してしまうところに信念の存在が感じられる。
しかも勝利してしまう引きの強さに、ひょっとしたらひょっとするのでは、
と思わせられた一戦であった。

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2004.04.01

なぜ人はブスを掴んでしまうのか?

美人(ブス)投票入門 ブス銘柄をつかまされないための13カ条
山本一郎@切込隊長 オーエス出版社
☆☆☆☆

本の帯をめくると女性キャスターのあられもない姿が現れる、ふざけた
表紙のこの本は、「株価が落ちそうになると懸命に材料を出す必死なブスの
あり様を、指を指し腹を抱えて笑いつつ」長期的に企業成長をのんびり眺めながら
資産形成をする方法を考える。
必然的に投下リソースの少ない個人投資家が株式投資で収益を上げる方法を
そんなものは知らん。
と1ページ使って言ってみたり、コラムのタイトルが「うんこ味のカレーの秘密」
だったり、やたらふざけた表現が目立つ。
この手の物言いは通例、ただただ下品になるか、厨房丸出しになるわけだが、
本書の場合、実に深く濃く面白い。「うんこ味のカレー」の味わいか?
それは、投資家として勝ち抜いてきた経験と、その背景にある尋常ではない
知識量や情報量、思考能力の高さに支えられたものと想像される。
決して子供が真似しちゃいけません。たいていは失敗するだろう。
たとえばこの著者、マスコミの推奨銘柄が信用できるかを確かめるために、
8年間もこの手の記事を収集・分析し続けた上で
「確実に損する仕組みが完成されているようなもの」
と結論付けるのだ。説得力があり、同時に口汚くなるのは必然かもしれない。
ふざけた表現とともに、内容そのものの魅力も非常に高い。
経営者の際どい話をそれとわかるようにしながら、ギリギリで訴訟リスクを
回避する書き方は、地雷原の中をひょいひょいとよけながら突っ走る
ような疾走感がある。
何のために走っているかは知らないが、投資入門的な扱いだけで終わらせては
もったいない、優れたビジネスエンターテイメント本とでも言うべき一冊。

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