「三菱車は、本当に×か」は×か?
CARトップという雑誌がある。表紙でアイドルがニコッと微笑んで、中身は
試乗インプレッションが続くという、自動車専門誌の一つだ。
ぼくは自動車にあまり興味がないのでこの手の雑誌は買ったことがないが、
その臨時増刊として出版された「三菱車は、本当に×か」は思わず手に取った。
「第一線で活躍する、自動車ジャーナリスト49人が語る『ミツビシ』」という
サブタイトルが付けられた本書は広告一切なしで390円。三菱自動車の不祥事を
受けて、本書はスポンサーであるメーカーに収益を頼らない形で出版したらしい。
広告なしの別冊を出したからといって、広告料が欠かせない出版社の収益構造が
変わるわけでもないだろうが、自動車専門誌として何か発信しなければという
姿勢は、頭を低くして嵐が通り過ぎるのを待つ輩よりはよっぽどマシだろう。
「ミツビシは何たって、悪いことは悪いのです。でも上段から悪いぞって見降ろすのと、
悩みぬいてそして、バカヤローと叫ぶのは、全然違うことだと思います」という
編集人の言葉は全面的に同意である。
でも、49人もの“第一線の自動車ジャーナリスト”がそれぞれ文章を寄せて
いるのだが、読む価値のあるものはほんの少ししかない。
「マスコミの三菱バッシングは行き過ぎ」
「現場、技術者は真面目な人が多い」
「悪いのは一部の上層部。三菱頑張れ」
そんな風に事象の上っ面を撫で回した文章がずらっと並び、うんざりするばかり。
ジャーナリストならではの見識や、ユーザーにとって有用な情報など、読んで
意味があったと思える内容が示されているのは清水草一氏や岡崎五朗氏、鈴木
直也氏ぐらいじゃないだろうか。少なくとも学生の作文レベルや、ろくに調べて
いないのが丸分かりの記事は勘弁してほしい。
結局、試乗インプレッション記事を中心としている人たちに、このテーマを
書かせたことに無理があったのか。
それとも、彼らには接待攻勢の毒がまわっているということなんでしょうか。
こちらは参考まで。
これは自戒を込めて言うのだが、企業や商品を紹介する記事を書くということは、
結果的にその広報活動につながるということでもある。そこでは当然、書き手の
見識や責任が問われる。広報の言うことを垂れ流すだけなら存在価値がない。
ただ、注意していてもヘマをすることがある。リコールと同じで、そんなときに
どんな対応をするかというのは極めて大事なことだ。その意味でこの本は「買い」
と思うのだが、残念ながら編集人の思いに応えられた書き手は限られている。
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コメント
表紙と編集人の前書きを店頭で読んで、購入しました。
読んだ後は、宮内さんと同じように、「ライターなのに薄い内容が多いな」と感じ、全ての人の記事を読むことが苦痛になりました。
車両火災についても、消防庁がネットで公開しているデータのままなので、もうちょっと取材すればいいのにと。
投稿: Nagano | 2004.08.16 21:59
Naganoさんこんばんは!
おっしゃる通り、調べた跡のみえる人はあまりいないし、
感想文レベルで終わっている方が多いですよね。
顔写真入りで無能ぶりをさらしているよーなものです。
でも、肩書きをみると「日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員」
だったりする(笑)。ぼくは自動車ジャーナリズムには縁が
ないのですが、本書を読む限り、ずいぶん不毛な世界だなと
いうのが率直な感想です。
投稿: kenzow | 2004.08.16 22:55
日経の広告を見て買い、わたしも先日読み終わりました。
ジャーナリストの意見がほとんど同じ。同じく後半は読むのが苦痛になりました
火災報道についてニュースでは三菱車しか報道されないのは疑問でした。
でも今のままのイメージでは私も今後の購入対象にはなりませんね
どこの車?って思う前に格好いい!と思わせるような
車が出てくれば乗り換えの時は検討に入る事もあるでしょう
投稿: MK | 2004.09.10 15:05
MKさん、こんにちは。
緊急出版はいいけど、もう少し内容に
配慮して欲しかったですね。
投稿: kenzow | 2004.09.11 14:27