オレ竜の胴上げが意味するもの
昔から人ごみが苦手で、コンサートだの野球観戦だの行くとたいてい風邪をもらって
ダウンするのだが、今回もやはりそうだった。まだ喉が痛いし鼻水も止まない(涙)。
そんな間にドラゴンズはさっさとリーグ優勝を決め、落合監督は見事に胴上げされた。
就任以降さんざん叩かれてきたのがウソのように、マスコミはオレ流絶賛の論調で
埋め尽くされるようになり、落合監督を追い続けてきた者なら誰でも見覚えのある、
ケチをつけてきた有象無象を結果で黙らせる光景が今、目の前に広がっている。
ぼくが今年のドラゴンズで好きだったのは、試合終盤の英智の守備固めであり
代打高橋光信であり、立浪に代わってサード川相であり、リリーフ岡本であった。
落合監督の功績の一つは、すべての選手に光を当てようとしたことにあると思う。
キャンプ中、朝から晩まで選手の練習に付き合い、その特性を見抜き、力を生かせる
場面に送り出した。当然ながら、その結果は選手によってさまざまではあるけれど、
選手の実力を見抜く眼力と、人を活かそうとする姿勢が一貫していた点は素晴らしい。
英智起用は守備を固めるというよりも、守備で相手を威圧している感すらあった。
マウンドへ行くときの笑顔が象徴するように、選手の尻をひっぱたくのではなく
背中を後押しするような態度も、選手が実力を過不足なく発揮できた要因だろう。
会社経営で「逆三角形のピラミッド」という話がある。
普通、組織図を描くと最高権力者であるトップを頂点とした統制的ピラミッド型になるが、
業績低迷にあえいでいたスカンジナビア航空は企業評価は顧客と出会う最初の15秒で
決するとの考えに基づいて、顧客に直接サービスを提供する最前線の社員を重要視し、
本社やトップはその支援者だと位置づけた。すなわち組織図を逆三角形のピラミッドへ
大転換し、顧客志向と現場への大幅な権限委譲を徹底し、業績を急回復させたのだ。
落合監督の取ったマネジメントスタイルはこれに似ている。あくまでグラウンドに立つ
プレーヤーが最重要で、監督やコーチはその支援者という位置づけ方が、である。
球界が明らかに転換期を迎えているこの時期に落合監督が登場したことは、実はとても
大きな意味を持っているのかもしれない。観戦の面白さは愚鈍な大男がホームランを
ポンポン連発することではなく、鍛え上げた肉体と頭脳を用いて1点をもぎ取り失点を
防ぐことのせめぎ合いであることに、少なくともドラゴンズファンなら気付いただろうし、
球界の盟主を気取ってきたチームがあまたの優秀な選手を飼い殺しファンを萎えさせる
一方で、ドラゴンズが二軍を「一軍予備軍」と位置づけ直し、埋もれていた選手が役割を
与えられ、輝き始めるワクワク感は対照的であった。
要するに、余計なことで失われていた野球の本質的な面白さを、落合監督はファンに
改めて提示したような気がするのである。それが浸透するには時間やビジネス上の
工夫も必要だろうが、そんな視点で眺めると今回の優勝は別の意味合いも帯びてくる。
【追記】
こんなご時世だというのに、優勝のグラウンドにオーナーと二軍選手が一緒に立ち、
オーナーを胴上げする風景は、勝つ組織に何が必要かを象徴しているかのようだった。
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