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2006.02.12

バルトで生扉を開けたら朝日が沈んでいた その2

以下、前回の続きね。長いっすよ。

このような概念をツールとして、バルトは「書かれた衣服の体系」に切り込んだ。一例を挙げよう。「レーシング・コースではプリントが全盛です」という雑誌の記述を分析したものが図4である。

4

ここには意味作用の体系が4つあるとバルトは分析する。
第一の体系は「現実の衣服のコード」。すなわち競馬場に足を運べば言葉に頼らずとも、レーシング・コースではプリント柄の服を着る人の多さを認識するという事実。

しかし、実際に現地にいるわけではない雑誌の読者にとっては、レーシング・コースもプリント柄も見ることはできない。ここで、「レーシング・コースではプリントが全盛です」という文は、第一体系を命題とする第二の体系「書かれた衣服のコード」を形成する。

さらに、そうとは書かれていなくても、雑誌に記述されたものはそれ自体、ア・ラ・モードを意味する。すなわち、単に記述されたという事実によって、書かれた衣服のコードを表現、モードを内容とする第3の体系が成立する。この第3の体系は、表記された言葉のコノテーション(文字通りの意味内容に随伴するものとして生じる情動的・感情的な意味効果)である。従って、第3体系は「モードのコノテーション」と名付けられている。

さて、このようにレーシング・コースではプリントが全盛だということ(体系1、体系2)、プリントとコースの相関関係がア・ラ・モードを意味すること(体系3)の上部に、さらにもう一つの体系があるとバルトは指摘する。それは雑誌自らが抱き、人々に伝えようとしている世界とモードの表象だ。つまり赤信号を教える教師の例と同様に、雑誌の特性的表現がコノテーションを生み出し、それが雑誌の世界観を伝えることになる。この第4の体系をバルトは「レトリックの体系」と名付けている。

以上を整理すると「レーシング・コースではプリントが全盛です」との記述は①現実の衣服のコード、②書かれた衣服のコードあるいは用語の体系、③モードのコノテーション、④レトリックの体系という4つの意味作用体系から構成される。また、①と②はデノテーション(辞書に登録されている語の最大公約数的な意味)③、④はコノテーションの面を形作っている。

このように「書かれた衣服」の意味作用構造の分析を行った「モードの体系」は、記号論の理論を実際に応用した書籍である、と総括することができる。ここから学ぶべきことを一言でまとめれば、次のようになるだろう。

言葉には、いろいろなものが覆いかぶさってくる。

要するに、言葉が文面通りに伝わることは極めて例外的で、さまざまなコノテーションが覆いかぶさって字義以上の何かを伝えていく、ということだ。ということは、バルトが「モードの体系」で行った仕事は、「ブランド」を考察する上で格好の道具立てとなる。なぜなら、ブランド構築とは本来の言葉(商標)に、さまざまな意味やストーリーを付加していく作業と見ることができるからだ。

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