オムライス>新聞倫理綱領
「サンケイスポーツ(サンスポ)」という新聞があります。一般紙と系列関係にある日刊スポーツやスポーツニッポンとは異なり、株式会社産業経済新聞社(産経新聞社)が直接発行している、プロ野球ファンには阪神ファン御用達の媒体として知られた存在です。
サンスポに掲載される中日ドラゴンズの記事はしばしば嫌味と揚げ足取りに満ちあふれ、その凋落を密かに願っているかのように見えます。しかし、それは当然というものです。サンスポは阪神ファンを喜ばせるのが第一の使命であり、かつドラゴンズの親会社たる中日新聞社は産経新聞社の競合会社なのですから。昔はどんなに電波な記事でも購買者以外に届かず済んでいましたが、今はネットでそれ以外の人の目にも触れてしまう。これはいたしかたのないことでしょう。
以上のコンテクストを理解していればサンスポのドラゴンズ番記者、兼田康次氏が執筆する極めてユニークな記事の数々も生暖かく見守れるというものです。が、しかし、時おり本当にその真意の解読が困難な記事が載ることがあって、読者を困惑させてくれます。そんな記事が先日もありました。ちょっと引用してみましょう。
また脱・星野色…中日が東京遠征の選手宿舎を今年から変更中日の東京遠征の選手宿舎が今年から変更されることが28日、明らかに。これまでは阪神と同じ赤坂のホテルを利用していたが、今年は数度に渡って東京滞在が重なるため、中日が撤退。結果的に星野色がまたひとつ消えることになった。
中日監督時代に築かれた阪神・星野仙一SDの“遺産”がまたひとつ、消えた。中日が今年から、赤坂の選手宿舎から撤退。同じ赤坂にある近隣のホテルに拠点を移すことになった。
(中略)
キャンプ宿舎の変更にユニホームの変更。星野元監督が阪神に“移籍”して以来、中日は星野色からの脱却を鮮明にしてきた。今回のケースは「関係ない」(球団関係者)とはいうが、もともとは星野元監督が直々に交渉してきた宿舎。レストランには好物のオムライスがメニューに加わるなど、ゆかりの深かったホテルだけに撤退に何の未練もなかったようだ。「(落合)監督に了承を取ったら(新たな選手宿舎のホテルに対して)喜んでいたよ。高級だから」と同編成担当。コスト面は千葉のホテルを同系列にすることで軽減したという。いずれにしても『星野=中日』というイメージは内外ともに消えていきそうだ。(3/1付)
http://www.sanspo.com/baseball/top/bt200603/bt2006030108.html
私の足りない頭では以下の点がさっぱりわかりません…。
・なぜ宿舎の変更が脱・星野色になるのか?
・まだ「星野=中日」というイメージなんてあるのか(星野氏は阪神球団の人間である)?
・そもそも、なぜこのタイミングで星野氏が記事にされるのか(そこにニュースバリューはあるのか)?
この記事に阪神ファンの需要があるのでしょうか。その辺も私にはよくわかりません。ただ、もうだいぶ前に阪神へ移った星野氏に随分おもねった記事であることは確かでしょう。この記事を執筆したことで、何か兼田記者の将来にいいことがあるんでしょうか? オムライスってそんなに美味しいのでしょうか?
しかし、星野氏へのおもねりが見え隠れする記事であるものの、「星野元監督が直々に交渉してきた宿舎」などと利権の発生を想像させるようなことを書いてしまった結果、氏の過去の悪い噂を読者に想起させてしまっているあたり、贔屓の引き倒しを特徴とするサンケイグループの大先輩、江尻良文(エジリン)氏の芸風を彷彿とさせてお茶目です。
で、やっとここからが本題です。この手の記事を書き散らす媒体(サンスポ及び夕刊フジ)を産経新聞社本体から発行するのはいかがなものでしょうか。中日スポーツも中日新聞社が直接発行していますが、ここまで露骨な記事はあまり見かけない。新聞倫理綱領には「正確と公正」「品格と節度」が明確に謳われていますが、遵守する気はないのかな。最近は朝日が読者の信用を失い凋落する一方、産経新聞は部数を増加させていますが、これでは産経もまた、信用を失墜させる要素を内包していると言わざるを得ません。
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