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2007.05.07

成功ってなんだろね

ビジョナリー・ピープル』読了。

 ビジョナリーな人とは、「自分自身の成功を定義し、最低20年以上その分野で長く続く影響を与えられるようになった人」のことだという。本書はこうした、独創的な成果をあげながら、一方で自分なりに生き甲斐を感じる生活を送ってきた200人以上の人たちのインタビューに基づいて執筆されている。具体的な名前をあげられているのはウォーレン・バフェットやジェフ・ベゾス、ネルソン・マンデラやジミー・カーター、クインシー・ジョーンズやU2のボノなど多岐にわたり、それらの中には違和感のある人もいる。

 なぜ、これらの人たちは継続的な成功をおさめられるのか?

 それは意義、思考スタイル、行動スタイルという3つの本質的な要素の整合性がとれているからだと著者は主張する。要は取り組む対象にフロー体験を得られるような意義を見出し、人一倍の情熱と同時に責任感を伴った楽観主義を持ち、意義を行動に移すときの困難に金縛りにならず仕事そのものを楽しむということだ。

 この主張の前提として、本書では従来の成功の定義の書き換えが試みられている。富や名声、権力といった「成功」の基準は、実はビジョナリーな人たちが追い求めているものではなく、個人的な大義に従って働いた結果の産物に過ぎない。ビジョナリーな人の成功の定義とは、個人的な充実感と変わらない人間関係を与えてくれ、自分にしかできない成果をあげさせてくれるような生活や仕事のことなのだ、という。

 個人が成果をあげる上で、取り組む仕事に対して個人的な情熱と社会的な意義を見出すことが重要といった主張は、わりと目にしているような気がする。その意味での新鮮さはそれほど感じなかったが、豊富なエピソードを根拠に主張が展開されている点と、成功を再定義しようとしているくだりは、けっこう重要なことを言っているのではないかと思う。

 たとえば、最近の格差社会の議論に適用すると、少なからぬ人たちが低収入で固定化されてしまうということより、充実感や生き甲斐を感じられぬまま漫然と生きている人々の増加、ということが本質的な問題であると言えるだろう。もちろん低収入層の増加も大問題だが、見方を変えれば、そうした人たちは充実感や生き甲斐を感じられない仕事や生活しかできていないからこそ、その産物もたいしたものにならないとも言える。

 成功者をあらわす言葉として最近は「勝ち組」だの「セレブ」だの言われているわけだが、そんなもんを最終的なゴールにしたい奴がどれだけいるのかってことを考えると、本書の議論は生産的かつ有益であろう。

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コメント

はじめまして、英治出版のMOHOと申します。
このたびは、『ビジョナリー・ピープル』につきまして、ご紹介、また貴重なご感想をいただきまして、まことにありがとうございます。スッタフ一同、大変励みとさせていただいております。

本書につきましては、多くの方々からコメントをお寄せいただいております。
今後さらに多くの読者に「ビジョナリーな人」になってもらうべく、ご本人さまの事前の同意をいただいたうえで、読者のみなさまの"生の声"を、本書の販促物(書店店頭用のPOP、ポスター、新聞・雑誌・テレビ等のメディア)や社内資料として使わせていただきたいと思いまして、ご連絡させていただきました。

また、ご快諾いただけましたら、お手数をおかけしまして申し訳ありませんが、コメントに残しましたe-mailアドレスあてにご連絡いただきたく存じます。

なお、制限文字数に限りがあるため、コメントの一部編集をさせていただく可能性があることをご了承ください。また、掲載可能なプロフィールもご連絡いただきたく思います。

名前(ハンドルネーム可):(ex)MOHO
年齢:(ex)28歳/30代 
性別:(ex)男性/女性
ご職業・部門:(ex)出版業・広報

ご検討いただけましたら幸いです。何卒よろしくお願いいたします。


英治出版株式会社(http://www.eijipress.co.jp/
出版プロデュサー MOHO

投稿: MOHO | 2007.05.22 18:28

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