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2007.07.22

ビジョナリー詐欺

 某茶店にて修士論文の相談話など。必用があれば遠慮なくどうぞ。おいらもさんざん諸先輩のお世話になっているのですから。

 で、この間の続き。日雇い派遣業2社の決算短信を見ていて興味深かったのが、無駄にビジョナリー志向であることだ。グッドウィル、フルキャストの決算短信の「経営方針」にはこう書かれている。

<当社グループは、企業理念である「拡大発展、社会貢献、自己実現」を基礎として、全社員が「弛まぬベンチャースピリット」を遺伝子として共有しております。>
<社員一人一人が、会社の拡大発展や社会貢献を支えていることを深く自覚し、自分の将来像を真剣に考え、それに向かって進んでいく自己実現の場を、会社が提供していくことも重要であると考えております。>(グッドウィル決算短信から引用)

<「人間としての成長を重視した雇用創造を通して社会貢献する」との基本理念をもとに、当社グループでは人生のあらゆるステージにおいて、輝きの場としての就業機会を提供し続けることのできる会社でありたいと考えております。>(フルキャスト決算短信より引用)

 これらの志高き言葉とは裏腹に、実態は偽装派遣やら給与のピンハネやら、昔の「口入れ屋」と大差なかったのは、ダイヤモンド7・14号特集「ハケンの裏側」等で取り上げられている通り。まあ、斡旋する対象が特別なスキルのない人たち、つまり未熟練労働者で弱い立場の人たちであるから、昔も今もそこにさまざまなしわ寄せがいきやすい構造ではある。だからといって現代の世に搾取などあってはならないから、法令が定められ、人材斡旋業者には法令遵守にとどまらないモラルが求められ、だから企業側も「社会貢献」を前面に打ち出しているわけだが、それらは見事にスルーされていたということだ。

 で、日雇い派遣の大手2社は立派な経営方針と実態との間に大きな乖離があるのは、先日書いたようにまともに待遇したら儲からないとか、経営が現場を統制しきれていなかったとか、もともと投資家を目くらますための作文だったとか、色んな理由が考えられるし、理由は一つじゃないのだろう。でも、根本はやはり経営者のあり方ですよ。とくにオーナー企業の経営者の場合、社内では絶対的権力者だから、ボスが右へ向けといったらみんな右を向く。向けない奴は辞めるしかない。だから、経営者が本気でビジョンを実現する気がなかったら、そんな言葉を大切にする社員はいない。

 声高に語る経営理念とやっていることがとてもかけ離れている企業は、最近わりと目につくような。それってある意味、詐欺である。ビジョナリー詐欺だよね。言っていることとやっていることの整合性があまりに取れていない状態は、とても恥ずかしいしリスクも高いはずなのだけど、身近に言ってあげる人がいないんだろうなあ。

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