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2007.08.31

晩夏

 北東からの風に晩夏の気配。気温がこのくらいだと、頭も身体もよく動いてくれるなあ。

生物と無生物のあいだ 』(福岡伸一 講談社現代新書)
 分子生物学研究の進展と生命観の変遷を、謎解きのようなスタイルで読者の興味を引きつけながら記述する腕前は、とても理系の学者とは思えぬレベル。門外漢にとって決してやさしくはない本だけど、もう15万部突破だそうで。

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2007.08.28

アクラシアな事態

 妙にナスがうまいと感じる今日この頃。この一週間はナスのタイカレー、ナスの味噌汁、ラタトゥイユ等々。

『アリストテレス―何が人間の行為を説明するのか? 』(高橋久一郎 NHK出版)

 さっさと仕事を片付けたほうがいいとわかっているのに、なぜ私たちは2chをのぞいたり、youtubeでくだらんVを眺めて時間を浪費してしまうのだろうか。本書はそんな「意志の弱さ(アクラシア)」についての議論を中心に、アリストテレスの「行為」に対する考え方を紹介する。

 アリストテレスは行動を「実践三段論法」によって説明する。実践三段論法とは何かが邪魔したり強制したりしない限り、「大前提」と「小前提」の二つの前提から、必然的に一つの行為が導かれるというものだ。大前提とは「善いもの」への欲求であり、小前提とはそうした行為を「可能なもの」にする個別的状況についての認識であるという。例えば、こんな具合…

<「私は飲むべきである」と欲望が言い、「これが飲み物だ」と感覚なり表象なり理性なりが言うと、彼はただちに飲む。>

 この文で大前提は「私は飲むべきである」、小前提は「これが飲み物だ」、そして行為は「飲む」ということになる。

 しかし、人間は「そうしたほうがいよい」という欲求と、「そうすることができる」という認識があったとしても、必ずしもそうするとは限らない。著者も<帰結するのは「私はこれをすべきである」という判断にすぎないように思われる>と指摘する。例を挙げると、デヴが「甘いものを食べないほうがよい」と知っていて、冷蔵庫に甘物があると認識したとき、「私はこれを食べるべきではない」と判断するかもしれないが、帰結としての行為はきれいさっぱりたいらげる、ということになるからだ。

 どうしてこのようなアクラシアな事態が起こるのか。著者は<アクラシアは「無知な状態での行為」である>とする。つまり、意志の弱いデヴは甘物を見つけたとき、実践三段論法の大前提を一時的に忘れてしまい働かなくなるために、おのれのメタボリックな腹回りなどお構いなしにバクバク食ってしまう、というわけである。では、なぜ大前提を持っている人が、それを忘れ、働かせなくなってしまうようなことが起こるのか。その答えとして挙げられているのが、次のアリストテレスの言葉である。

<学習したばかりの人でもロゴスを繋ぎ合わせることはできる。だが、彼等には何も分かっていない。そのためにはロゴスが相互にしっかりと結び合わされ〔性向となら〕なければならないが、それには時間を要する。>

 この辺りの議論は、わりと納得のいくものだと思われる。まず、実践三段論法の大前提にあたる「善いものへの欲求」を知ること、次にそれを性向として身につけること。そこにアクラシアを克服し、人が物事を為せるようになるかどうかのポイントがあるような気がするが、どうでしょう。

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2007.08.23

審判とゲームコントロール

 夜道を歩くと虫の声。今年の夏も海に行かずじまい、だな。

 佐賀北の集中力は大したものでした。でも、見ていた人は分かると思いますが、8回の審判の露骨な糞ジャッジはなんだったのか。高野連としては特待生問題のない公立高校に勝たせたかったのかねー、とは思いたくないけれど。

 ジャッジをする立場の人間が妙な介入の仕方をすると、ゲームが公平に成立しないし勝敗の正当性すら問われてしまう。最近、企業の内部統制がらみで「審判」の妥当性的なことをよく考えるので、かなり気になりました。

<コントロールという言葉を誤解され、審判はフィールドの指揮者のように言われることがあるが、それは違う。(中略)試合を面白くするのはあくまでも選手だ。審判は立会人であり、起きたことを判断し、ケガやつまらないプレーを予防するためにいるのである。>(『平常心―サッカーの審判という仕事』上川徹 ランダムハウス講談社)


 

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2007.08.13

イチロー三昧

 何度も書くけど、あちぃ。無理せずたっぷり午睡。本日は昼寝三昧、そしてイチロー三昧。

イチロー素顔の青春』(吹上流一郎 ラインブックス)
 1995年7月、つまり94年にイチローが初の首位打者を獲得した翌年に刊行された本の加筆・修正版。なんというか、履歴書をなぞったような原稿。
イチロー物語 』(佐藤健 毎日新聞社)
 これも1995年に発刊された、いわば初期イチロー本。描かれているエピソードは『素顔の青春』とだいぶ被るが、新聞記者らしい文章と展開で読める。
溺愛―我が子イチロー』(鈴木宣之 小学館)
 いわゆるチチロー本。ある意味、この父親は自分の人生の重要な一時期を息子のためにくれてやったようなもの。息子は不世出の打者へと成長してけれど、一人の人生としてはどうだろね。
イチローに教えたこと、教えられたこと―高校時代の恩師が語るイチローの原石時代』(中村豪 日本文芸社)
 こちらはイチローの母校、愛工大明電高校野球部監督によるイチロー思い出話。まだ入団したての頃、二軍落ちしたときや打てないときにイチローから相談の電話がかかってきたそうで、一見、孤高に見えるイチローもこういう人たちに支えられているのだなあ。
ICHIRO―メジャーを震撼させた男 』(ボブ・シャーウィン 朝日新聞社)
 2001年、メジャーに渡ったイチローの大活躍を丹念に追った、シアトル・マリナーズ担当記者によるレポート。アメリカ人がイチローからどんなインパクトを受けていたのかがわかる。
イチロー・オン・イチロー』(小松成美 新潮社)
 メジャー1年目のシーズン終了後と、それ以前に行ったインタビューの記録。このインタビューアーは相当イチローに信頼されていると感じる。
イチロー革命』(ロバート・ホワイティング 早川書房)
 アメリカ人の視点から野球を素材に日本文化に切り込む作品で知られた著者による、日本人メジャーリーガーのレポート。当初、日本野球というテーマには「うんざりしはじめ」「吐き気さえもよおすようになっていた」が、出版社からのオファーはアメリカにいる日本人がテーマだったので、何も知らないアメリカ人のために本書を執筆する気になったという。でも、描いている対象が在メジャーの日本人になっているだけで、著者が物事を斬る枠組みは『和をもって日本となす』の頃と悪い意味で変わらない。おいらの記憶が確かなら、ですが(確かめたいが手元に本がない。これはそのうち)。過去の著書が日本野球のあり方に影響を与え、それで変化が生じた部分もあると思うのだけれど、著者自身はその変化をとらえきれていない感がするな。
イチロー 262のメッセージ』(「夢をつかむ イチロー262のメッセージ」編集委員会)
 2001年から2004年にかけてメディアで報じられたイチローのコメントを262のシンプルなメッセージにまとめ、簡単な解説を加えた一冊。よく売れているみたいです。でも、仕事としては単に色んな媒体の記事から発言を拾って集めただけに過ぎない。一応、解説が付け加えられてはいるが、その背景が必ずしも書き込まれているわけではないので、読者が言葉の上っ面をなでる結果になるであろうメッセージもちらほら。
イチローUSA語録 (集英社新書)』(デイヴィッド・シールズ編 集英社新書)
 こちらもメディアが報じたイチローのコメント集だが、アメリカの媒体で掲載されたコメントをアメリカの作家が選び集めた点と、元記事の英語が掲載されているところが異なる。見開きの右ページが日本語、左ページが英語。

 とりあえず、手近の書店と図書館で入手できたイチロー関連本の範囲はこんなところ。イチローが世に出る以前を知るには『イチロー物語 』、大リーグ挑戦という節目を中心にイチローの考え方を知るには『イチロー・オン・イチロー』がよいかな。ほかによい本があったらぜひご教示くださいませ。

 たぶんオールスターでMVPをとった今シーズン後も何冊かイチロー本が出版されると思うけど、これだけたくさん出版されていると差別化が難しいっすね。

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2007.08.10

二番目人生

今さらながら、セカンドライフに登録してみる。

で、結論としては、うちのPCのスペックではムリポ。アバターがまともに動いてくんない。もう指摘されているんだろうけど、PCのスペックがボトルネックになりそうなサービスだなあ。

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打ち水にモチベーション

 相変わらずあちぃ。でも、夜になって外出したら意外と涼しい。この部屋は最上階かつ日当たりがとてもよいせいか、夜になっても熱がこもる。ビル全体に打ち水ぶちまけたい。この差し水野郎、いや打ち水野郎と呼んでくれ。

モチベーション・リーダーシップ 組織を率いるための30の原則 』(小笹芳央 PHPビジネス新書)
 最近何かと話題のモチベーション。本書の著者は(株)リンクアンドモチベーションという、社名にモチベーションを冠した会社の創業者で、雑誌のモチベーションややる気関係の企画になると必ず取材候補にあげられる。業績もかなり好調のようだ。
 組織・人事に関するニーズは多様化している。普通であれば顧客ニーズの多様化には専門分化で対応するところだが、著者はそれらすべての背後には「社員のモチベーションを高めて業績を向上させたい」という問題意識があると判断し、自社のビジネスをモチベーションという一つのコンセプトで括り、業務を展開したという。そこに経営者としての凄みを感じる。内容についてはリンク先のアマゾンを参照くだされ。

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2007.08.08

モチベーションの逆説

 起きて資料読み2冊、原稿8枚、取材1、原稿8枚。麻婆豆腐、ビール1。あちぃ。

「儲かる仕組み」をつくりなさい』(小山昇 河出書房新社)
朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』(小山昇 ダイヤモンド社)
 ふつう、社員のモチベーションを上げたいのなら本人の自主性を尊重すべしという話が多い。ところが中小企業の経営者である本書の著者は「うちの会社に自主的に動ける人間が入ってくるわけないだろ!」と言い切る。実際、前任者から引き継いで社長に就任したとき、「幹部社員の3分の1が暴走族」で内情はボロボロだったらしい。
 ところがそんな社員たちを鍛えることで、今やこの会社は日本経営品質賞を受賞するほどの経営の仕組みを構築。著者はセミナーに引っ張りだこで年140回超の講演をこなす。
 この人はいったい何をやったのか。そのキモは、社員によいことを強制することだという。「よいことを強制すると、みんなが明るくなる」そうだ。 
 もちろん強制するだけでは社員は反発し、ごまかそうとする。ではどうやってやらせるのか。そこには著者がいう「実践心理学」に基づいた仕組みがあり、中小企業人材のどうしようもないプアーさに直面する者へ希望を与える内容になっている。


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2007.08.06

腕や資格があっても食えていない人に

 朝から原稿。午睡。夜に再び原稿。原稿書くのが苦痛でなくなったのはいつからだったか。昔は高校の担任から「論文試験のある大学はやめとけ」と進路指導されたもんです。

戦略プロフェッショナル・ベーシック・スキル』(小笹芳央 秋山進 石井至 JMM)
 先日、売れっ子キャリアコンサルタントの方とお話をしていたら、「せっかく資格とっても、この世界で食えているのはほんの一握りですよ」とのこと。資格さえ取ればなんとかなるというのは、弁護士や会計士みたいな資格の有無自体が参入障壁になっている世界だけで、キャリアコンサルタントとか中小企業診断士といった資格をとったって、それで収入が保証されるわけじゃない。資格の世界だけじゃなく、何らかの高度なスキルを持っていたって、それだけでは食えない。

 何が言いたいかというと、もちろんテクニカルなスキルは大切なのだけど、ちゃんと仕事ができて、かつ食えるようになるにはそれ以外の要素も必用ということだ。まあ、この辺は自戒を込めて言っております(汗)。では、その要素とはいったい何なのだろう。『戦略プロフェッショナル・ベーシック・スキル』は「仕事ができる」とは具体的にどういうことかについて真っ正面から向き合い、そのために必用なスキルについて解説した一冊。

「仕事ができる」ために必用なスキルは、本書では次のようにまとめられている。
プロフェッショナルスタンス:プロとして最低限身につけておかなければならないスタンス。
コミュニケーションスキル:他者と関わりを持ちながら仕事を進めていくために必用なスキル。
コンセプチュアルスキル:仕事を進めていく上で有効な思考方法。

「腕さえよければいいだろ!」と考えがちな職人タイプの人、「資格さえ取ればなんとかなる」と安易に考えている資格厨タイプの人にとって、とても有益です。

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2007.08.04

港のお仕事

 朝9時から取材、打合せ、会食兼ブレスト、そして3時間頂いてロングインタビュー。

 

フルキャストに業務改善命令。違法派遣先は港湾荷役。うーむ。

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2007.08.03

「相手の心の中にある宝物」

 ようやく梅雨が明け、あちぃ。午後は仕事にならないなぁ。

感じるマネジメント』 (リクルートHCソリューショングループ編 英治出版)
 本書は世界有数の自動車部品メーカー、デンソーがグローバル化した自社組織において、デンソー・スピリットを共有しようとする取り組みの物語。筆者は取り組みを主導したコンサルタントで、その視点から記述は行われている。
 企業理念やビジョンの重要性は今さら言うまでもなく、おいらも仕事で理念づくりやビジョンを共有するための冊子づくりのお手伝いをすることがあるので手に取ってみたのだが、これが意外と面白かったのでちょいと書評など。
 理念などで会社が大切にすべき価値観を明確にすることはとても大切な作業であるが、本当に難しいのはそこから先だ。立派な理念をつくっても組織に浸透させることができずに終わったケースは掃いて捨てるほどあるだろう。どこぞのコムスンみたいにみんなで唱和したって、そう簡単に社訓の類が人の心に受容されるわけではないのです。まして、デンソーのような世界中に拠点を持つ巨大グローバル企業で価値観を共有する難しさは想像を絶する。
 本書、というかデンソーのケースがユニークなのは、デンソー・スピリットを浸透させる方法論としてキリスト教の伝道に着目し、そこから価値観伝播のモデルをつくり出した点にある。伝道の要諦は「相手の心の中にある宝物」を相手と一緒に見つけながら共に豊かになることにあり、そこから「相手の心の中にある宝物」とデンソー・スピリットをつなぐ方法を筆者らは探っていったのだ。
 キリスト教の伝道については、スペインが南米でやったことなどを考えると、個人的にはろくな印象を持っていないのだけれど、それを抜きにすれば「こんな意外なところからヒントを得て、新たな方法を確立していけるのか」という面白さがあった。

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