« 官能小説の奥義 | トップページ | 船場吉兆メモ追記 »

2007.11.25

白い恋人メモ

 その土地ならではの何かがあるわけではないけれど、ホワイトチョコを使った商品とネーミングが北海道のイメージとうまくはまって土産物として定番化。一躍地元の名士として持ち上げられ、地域の財界活動が忙しくなり会社はほぼ番頭任せにしていても、店頭に商品を並べれば売れる状態が長年続き報酬は年1億円。それはある意味、経営者として理想的な“あがり”の状態かもしれませんが、社長が会社経営への情熱を失ったことは必然的かもしれません。

 そう考えると、白い恋人に関する問題が発覚した直後の、石屋製菓の経営者のグダグダぶりは当然の帰結といえます。なにしろ今どき、経営理念すら策定していなかったというのですから。それゆえ、その後の販売再開に至る一連の対応――コンプライアンス委員会の設置と社内調査、体制改善と保健所からの販売再開の承認取得――は手際よくスピーディーで、ちょっと意外感がありました。それで新聞記事やコンプライアンス確立外部委員会の報告書を眺めていたら、問題処理を主導していたのは銀行だったのですね。

 一連の経緯を報告書と新聞から抜き書きしておくと、次のような流れになります。

 平成8年10月ころ~  「白い恋人」に複数の賞味期限が設定される。
 平成16年ころ~    「白い恋人」の賞味期限が4,5,6か月のパターンへ拡大する。
 平成17年ころ~    その他の製品についても賞味期限の伸張、再表示が行われる。
 平成19年6月30日   ミルキーロッキーから大腸菌群検出される。
     7月28日   バウムクーヘンから黄色ブドウ球菌が検出される。
     8月12日   ミルキーロッキーの問題について、新聞に社告を掲載する。
            但し、製造工程が違法であった旨のみの内容であり、
            大腸菌群検出については触れられていない。
     8月14日   保健所へ事実関係を報告し、記者会見を行う。
     8月15日   改ざんを発案した経緯について発表する。
     8月17日   午後8時記者会見、前社長の退任を発表する。
           「コンプライアンス確立外部委員会」発足。
     8月23日   石水勲前社長辞任、島田俊平新社長就任。
     9月25日   改正報告書等を北海道及び札幌市へ報告。
     10月29日   札幌市保健所が設備確認等の目的で検査。
     11月9日   札幌市保健所が「白い恋人」の製造・販売について承認。
     11月22日  「白い恋人」発売再開

 

ここの記事によると、8月16日に北洋銀行の高向会長が石水前社長と面会し、石屋製菓への緊急融資の実行を決めたとあります。前社長が辞任し北洋銀行出身の島田氏が新社長に就任したのも当然銀行の意志で、素早い動きの背後には北海道最大の銀行として石屋製菓をつぶすわけにはいかないとの判断があったのでしょう。

 以下に賞味期限改ざんの事情について前社長が答えている突っ込み所満載のインタビューがあり、なかなか面白いです。偽装はこういう社長の会社でこんな感じで行われているんだと。

 

「石屋製菓」賞味期限改ざん 石水勲前社長が胸中を吐露 前編 
 「石屋製菓」賞味期限改ざん 石水勲前社長が胸中を吐露 後編

 で、8月16日に白い恋人の自主回収を告知してから販売再開までに要した期間は約3か月。その短い間に全6回のコンプライアンス確立外部委員会を開催し、原因の分析とコンプライアンス体制の整備や経営理念・経営ビジョンの策定等を行ったことは評価できます。時間が長引くほど消費者は「ちゃんとやっているのか」と不信感を強めますし、販売再開が遅れれば遅れるほど売上のない期間が長くなりますから、これらのプロセスを素早くやることは業績の悪化を軽減することにもつながるわけです。

 たとえば石屋製菓では問題の公表からコンプライアンス確立外部委員会の設置までほんの数日だったのに対し、赤福では10月12日に「お詫び」の社告を出してからコンプライアンス諮問委員会の設置まで1ヶ月近くかかっています。(同じ同族企業でありながらこの差がどこで生まれたかというと、やはり銀行という外部者がすぐ介入したかどうかの違いでしょう。)白い恋人の販売再開後の売れ行きは好調のようです。それは、発覚した問題への素早い対応がダメージを最小限にとどめた面が大きいと思います。

 今後の課題は新たに確立した体制を組織に定着できるかどうか。それには新体制が機能しているかどうかを継続してモニタリングする機構が必要で、同社では現行のコンプライアンス確立外部委員会を発展的に解消し、新たに組織されるコンプライアンス委員会がその役割を担っていくようです。この新コンプライアンス委員会が機能するかどうか、すなわちモニタリングとその内容の発信が継続して行われていくかどうかが、一つの目安になると思います。

|

« 官能小説の奥義 | トップページ | 船場吉兆メモ追記 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 白い恋人メモ:

« 官能小説の奥義 | トップページ | 船場吉兆メモ追記 »