クリエイティブ・クラスの世紀
11月は積ん読撲滅月間、ということで『クリエイティブ・クラスの世紀』を手にしてみたが、残念ながらこれは期待はずれ。なにしろ、「クリエイティブ・クラス」というものの定義がはっきり出てこないし、従来から提示されている「知識労働者」との違いもよくわかりません。著者のフロリダは知識労働者という概念に対する個人的な不満の結果としてクリエイティブ・クラスという概念を創出したと言っているけれど。
出発点があやふやだから、読み進めていってもなんだかふわふわした感じがずっと続きます。しかも、主張が十分理解できていないところに著者に対する批判 への反論が多々挿入されるので、ますます焦点がぼやけていく。なんじゃこりゃ、と思ったら、この本はフロリダの「クリエイティブ・クラス」をテーマとした 著書としては第3弾なのでした。ちなみに第一弾がThe Rise of fhe Creative Class(2002)、第二弾がCities and the Creative Class(2004)。本書は2005年に出版されたThe Flight of the Creative Classの訳本で、この第三作を日本では先に出したということです。
本書が今ひとつな理由はここにありそうです。おそらく本書は第一作と第二作を読者が読んでいる、あるいはそこで発信された情報や議論がアメリカ国内の読 者にはある程度周知されたという前提に立って執筆されたのではないでしょうか。だから、そうした前提に立っていない私のような読者にはクエスチョンマーク が付く内容となってしまった。訳者の松井典夫氏は本書から入っていくのが最も適切と考えたと訳者あとがきで記していますが、同意できないな。本書を最初に 出すのであれば、もっと編集的な補足が必要だった。
とはいえ、「テクノロジー(技術)、タレント(才能)、トレランス(寛容性)という三つのTが経済成長を担う」というフロリダの主張とそれをデータで裏 付けていこうとする試みは面白いし、日本でぼんやり暮らしているとあまり感じない世界的な才能獲得競争やそれに対する米国の危機感を知ることは有益だと思 います(この辺のテーマはずいぶん報じられるようになったので、新鮮味が薄れているきらいはありますが)。クリエイティブ・クラスシリーズ第一作のThe Rise of fhe Creative Classが07年に刊行予定とのことなので、こちらに期待したいと思います。
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コメント
確かに「クリエイティブクラス」ってなんぞや??って思いますよね
つい「クリエイティブ」って言葉で引っ張られ読者となった人たち、
多いと思います。。
投稿: OLちゃん | 2007.11.21 15:19
そうですよねー
投稿: kenzow | 2007.11.21 19:03