官能小説の奥義
文章表現の世界で官能小説が独特の発展を遂げてきたことは、世の殿方wには説明するまでもありません。考えてみるとこれだけアダルトビデオが出回り、ネットでエロ画像を簡単入手できるようになっても、活字だけで勝負する官能小説が一定の支持を保っているのはものすごいことです。その理由は、読者の官能を刺激する独自の表現を作家たちが文字どおり精魂傾けて編み出し続けてきたからなのでしょう。
その官能小説の文体の整理と分析を試みたという触れ込みの一冊が『官能小説の奥義』。
著者は「ダカーポ」誌で創刊から官能小説の紹介を行っている方で、読んだ本の数は一万冊を超えるそうです。しかし、残念ながら本書で多くのページを割いて いる性器や性交描写に関する記述は表面的な分類による引用の嵐に終始し、分析というほどのものではありません。そもそも、これほど引用ばかりで著者が自分で書 いた文章が少ないってのは、本の性格もあるにせよラクしすぎじゃねーの、と思います。
ただ、まったく読むべきところがないわけではなく、官能小説の文体の歴史やストーリー展開を分析した章は興味深く読めます。そちらを中心に内容を構成し たほうがよかったんじゃないかなぁ。最後の章にまとめられた「官能小説の書き方十か条」での「書いている途中でオナニーするな」という指南には、官能小説 家のあり方が凝縮されているような気がしました。
書いていて自分が興奮するような文章でなければ読者を興奮させられない。かといって執筆中に“自爆”してしまえば創造力(=想像力)を維持できない。欲望を徹底的に掘り起こしながらも禁欲的。いやー、たいへんな世界だと思います。
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コメント
むかし、官能小説家の本を編集したことがあります。いただいた原稿を読後、「いやー、読んでいると仕事にならなくて、困りましたよ」と言ったら、作家さんはとても喜ばれました。
我ながら、最上の褒め言葉だったと今にして思います(笑)。
投稿: カズぼん | 2007.11.21 00:00
さすが、仕事の守備範囲が井端並に広いですね(笑)
投稿: kenzow | 2007.11.21 19:00