景気ってなんだろね②
7~9月期の国内総生産(GDP)は2期連続のマイナス。内訳をみると家計最終消費支出が0.3%のプラスだったものの、設備投資が1.7%の大きなマイナス、輸出-輸入(純輸出)が0.2%のマイナス。与謝野たんも「景気は後退局面にあり、先行きも下向きの動きが続く」と悲観的。
給料あがらねえしサブプライムはあんなだし世界中からお偉いさんが集まってウダウダやってるしそりゃ景気悪くなってんでしょ、という直感的な理解はもはや誰だって持っているんだろうけど、どのようなメカニズムで日本の景気は悪くなっているのか、基本的なところを『景気ってなんだろう』を参考に整理してみる。
まず、企業の設備投資がなんで落ち込むのか。設備投資は企業が将来の売上高が伸びると予想したとき、生産能力を高めるために増やされる。つまり、企業は将来の売上が減ると強く予想しているわけだ。では、何を根拠に将来を悲観的にみているかというと、やはり海外の景気悪化の影響が大きい。
<ここで、最近の設備投資を考えるうえで、設備投資が海外売上高の影響を強く受けるようになった点に、注意しておきたいと思います。(中略)
設備投資の決定に当たって重要な売上高は、国内の売上高と海外での売上高から構成されます。海外売上高は輸出と海外の日本の現地法人(日本の会社の海外の子会社)の売上高から構成されますが、二〇〇〇年代に入って以降、日本では、両方の売上高が急増しています。一方、国内売上高は伸び悩んでいます。
その結果、日本の設備投資は国内の売上高よりも、輸出を含めた海外売上高の増減や伸び率の変化を受けて変動するようになっています>(P58~)
一方、純輸出のマイナスも海外の景気悪化が大きいわけだけど、「海外」といってもいろいろあるわけで。アメリカがクシャミすると日本は風邪ひくなんて言い方も昔はあったけど、あんまりいわれなくなったのは、日本の輸出先としての米国シェアが低下し、アジア諸国が上昇したからだろう。
<八八年には、日本の輸出先として、アメリカとカナダを中心とする北米のシェアが三六%を占めていました。しかし、〇七年になると、北米のシェアが二二%まで低下する一方で、アジア諸国のシェアが八八年の二九%から四八%へと大幅に上昇しました。なかでも、二〇〇〇年代にはいって、中国への輸出が急増しています。>(P75~)
しかし、アジア諸国も米国への輸出によって稼いでおり、日本ほどではないかもしれないが、米国の景気悪化の影響を受け、その悪影響を日本も受ける。というか、下記の引用部分を読むと、モノを輸出して稼ぐ輸出立国モデル自体、もはや成立しないんじゃないかと。
<世界の経常収支の黒字のほとんどは日本と新興・発展途上国で、その赤字はアメリカとEUで発生しています。日本と新興・発展途上国が稼ぎ出した黒字のお金は、今度は、アメリカとEUに流れて、アメリカとEUに貸し付けられます。アメリカとEUはこの貸してもらったお金で、輸出以上に輸入するために必要なお金を日本と新興・発展途上国に支払うのです。(中略)
なかでも、アメリカの経常収支赤字は驚くほど巨額です。たとえば、〇七年のアメリカの経常収支赤字は同国とEUの経常収支赤字の合計の七八%に達しています。
以上から、アメリカ以外の国が輸入した以上に輸出したモノのほとんどは、アメリカが輸入していることになります。これをお金の流れでみると、世界が貿易で獲得したお金のほとんどは、アメリカが借金して吸収している、ということになります。
世界の一国に過ぎないアメリカが、世界の経常収支の黒字にほぼ相当するお金を飲み込んで、世界中からモノを買いまくっている様子は、まるで、すべてのモノを飲み込んでしまうブラック・ホールのようです。
仮に、アメリカの景気が大きく悪化して、そのブラック・ホールが飲み込める量が大幅に減少したとしましょう。現在のところ、アメリカに代わって、ブラック・ホールの役割を担える国は存在しません。そうであれば、経常収支の黒字国はアメリカが飲み込める量にあわせて、輸出を減らし、減った輸出にあわせて、国内の生産を減らすしかありません。これが、世界的な景気後退、すなわち、世界同時不況が引き起こされる有力なシナリオの一つです。>(P83~)
こうしてみると、ちょっと前までの世界的な好景気はアメリカのブラック・ホールに各国が輸出品をブチ込むことで成立していたんだなあ。で、急激にそのブラック・ホールが閉じつつある今、どうやって景気悪化を食い止めるかを考えると、内需をいかに拡大させるかに向かわざるを得ないんだろうけど……。
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