2008.11.19

景気ってなんだろね②

 7~9月期の国内総生産(GDP)は2期連続のマイナス。内訳をみると家計最終消費支出が0.3%のプラスだったものの、設備投資が1.7%の大きなマイナス、輸出-輸入(純輸出)が0.2%のマイナス。与謝野たんも「景気は後退局面にあり、先行きも下向きの動きが続く」と悲観的。

 給料あがらねえしサブプライムはあんなだし世界中からお偉いさんが集まってウダウダやってるしそりゃ景気悪くなってんでしょ、という直感的な理解はもはや誰だって持っているんだろうけど、どのようなメカニズムで日本の景気は悪くなっているのか、基本的なところを『景気ってなんだろう』を参考に整理してみる。

 まず、企業の設備投資がなんで落ち込むのか。設備投資は企業が将来の売上高が伸びると予想したとき、生産能力を高めるために増やされる。つまり、企業は将来の売上が減ると強く予想しているわけだ。では、何を根拠に将来を悲観的にみているかというと、やはり海外の景気悪化の影響が大きい。

<ここで、最近の設備投資を考えるうえで、設備投資が海外売上高の影響を強く受けるようになった点に、注意しておきたいと思います。(中略)
 設備投資の決定に当たって重要な売上高は、国内の売上高と海外での売上高から構成されます。海外売上高は輸出と海外の日本の現地法人(日本の会社の海外の子会社)の売上高から構成されますが、二〇〇〇年代に入って以降、日本では、両方の売上高が急増しています。一方、国内売上高は伸び悩んでいます。
 その結果、日本の設備投資は国内の売上高よりも、輸出を含めた海外売上高の増減や伸び率の変化を受けて変動するようになっています>(P58~)

 一方、純輸出のマイナスも海外の景気悪化が大きいわけだけど、「海外」といってもいろいろあるわけで。アメリカがクシャミすると日本は風邪ひくなんて言い方も昔はあったけど、あんまりいわれなくなったのは、日本の輸出先としての米国シェアが低下し、アジア諸国が上昇したからだろう。

<八八年には、日本の輸出先として、アメリカとカナダを中心とする北米のシェアが三六%を占めていました。しかし、〇七年になると、北米のシェアが二二%まで低下する一方で、アジア諸国のシェアが八八年の二九%から四八%へと大幅に上昇しました。なかでも、二〇〇〇年代にはいって、中国への輸出が急増しています。>(P75~)

 しかし、アジア諸国も米国への輸出によって稼いでおり、日本ほどではないかもしれないが、米国の景気悪化の影響を受け、その悪影響を日本も受ける。というか、下記の引用部分を読むと、モノを輸出して稼ぐ輸出立国モデル自体、もはや成立しないんじゃないかと。

<世界の経常収支の黒字のほとんどは日本と新興・発展途上国で、その赤字はアメリカとEUで発生しています。日本と新興・発展途上国が稼ぎ出した黒字のお金は、今度は、アメリカとEUに流れて、アメリカとEUに貸し付けられます。アメリカとEUはこの貸してもらったお金で、輸出以上に輸入するために必要なお金を日本と新興・発展途上国に支払うのです。(中略)
 なかでも、アメリカの経常収支赤字は驚くほど巨額です。たとえば、〇七年のアメリカの経常収支赤字は同国とEUの経常収支赤字の合計の七八%に達しています。
 以上から、アメリカ以外の国が輸入した以上に輸出したモノのほとんどは、アメリカが輸入していることになります。これをお金の流れでみると、世界が貿易で獲得したお金のほとんどは、アメリカが借金して吸収している、ということになります。
 世界の一国に過ぎないアメリカが、世界の経常収支の黒字にほぼ相当するお金を飲み込んで、世界中からモノを買いまくっている様子は、まるで、すべてのモノを飲み込んでしまうブラック・ホールのようです。
 仮に、アメリカの景気が大きく悪化して、そのブラック・ホールが飲み込める量が大幅に減少したとしましょう。現在のところ、アメリカに代わって、ブラック・ホールの役割を担える国は存在しません。そうであれば、経常収支の黒字国はアメリカが飲み込める量にあわせて、輸出を減らし、減った輸出にあわせて、国内の生産を減らすしかありません。これが、世界的な景気後退、すなわち、世界同時不況が引き起こされる有力なシナリオの一つです。>(P83~)

 こうしてみると、ちょっと前までの世界的な好景気はアメリカのブラック・ホールに各国が輸出品をブチ込むことで成立していたんだなあ。で、急激にそのブラック・ホールが閉じつつある今、どうやって景気悪化を食い止めるかを考えると、内需をいかに拡大させるかに向かわざるを得ないんだろうけど……。

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2008.11.10

カマ騒ぎ

 人にもらって数年使用していた中古の電子ジャーがついに使用不能になり、電器店へ行ってみたら炊飯器売り場がすごいことになっていますた。いや、高級機が売れているとは知っていたんですが、各社が10万円前後の製品をガンガンプッシュしているとは思わなかったので。それぞれ力の入った製品だけあって、コピーも心躍らせられるものがあるのでした。各社の高級機種のコピーを拾ってみるとこんな感じ。

象印 真空内釜圧力IH炊飯ジャー  極め炊き
沸とう前から、しっかり加圧。パワー圧力
好みの食感が選べる 7段圧力
薪火炊き  釜底の工夫で沸きあがる気泡、激しい対流を巻き起こす

タイガー 土鍋IH炊飯ジャー 炊きたて 土鍋釜・黒
土にこだわり、手間ひま惜しまず、丹精こめて三度焼きした本物の土鍋釜。
土鍋の側面まで広げた発熱体が「かまどの火足」を再現。
蒸気を感知し、温度・火力を最適にコントロールするタイガーだけの5つの「極(きわみ)センサー」。

サンヨー 圧力IHジャー炊飯器:匠純銅 おどり炊き
熱伝導率の高い純銅釜を採用 "おどり炊き" がさらにおいしく進化
熱伝導効率の高い純度99.9% 「匠純銅内釜」+高火力を実現する「熱封じかまど構造」
特許※1の可変圧力技術を吸水工程にも応用した「NEWおどり炊き炊飯方式」採用

三菱電機 IHジャー炊飯器/炭炊きシリーズ「本炭釜」 Wclass
炭素材料99.9パーセントの、贅沢な削り出し釜です。
ひとつひとつ、職人が丹精をこめて仕上げます。
IHと相性のいい炭素材料。釜全体が一気に発熱。

パナソニック スチームIHジャー炊飯器(1升炊き) SR-SV181P-K
「大火力竈釜(かまどがま)」搭載。おいしさを極めた炊飯器登場。
おこげが香ばしい「大火力竈釜(かまどがま)」
羽釜と炎と竈の効果を一体化。

 三度焼きの土鍋釜に炭素99.9%の削りだし釜、匠純銅内釜、大火力竈釜って壮大なるカマ騒ぎですな。三洋電機はおどり炊きが前年比4~5倍のヒットで、炊飯器事業からの撤退を免れたそうで。パナソニックの買収でどうなるんでしょう。それにしても意外に差別化、高級化にしのぎを削る熱い市場だったんだなあ。

 で、ちょっと調べてみたらこのご時世に電気炊飯器の生産実績は2004年以降、金額ベースで前年比UPを継続していて、2007年の生産数量は約449万台、生産金額640億5700万円。とはいえ、さかのぼってみると1994年には750万台、941億700万円生産していた。うーむ。

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2008.05.08

「休みたいならやめればいい」の件

 ゴールデンウィークが終わり、風薫る季節に。しかしGWといっても、フリーになってからはGW明けに必ず〆切を設定されるわけでして。しかも世の中の浮ついた空気に流されて仕事に集中できず、結局は毎年、中途半端な日々になりますですorz

 で、「休み」関連でちょっと前の記事ですが、日本電産の永守社長が「休みたいならやめればいい」と言ったという件。この人の著作は何冊か読んでいるので、そのくらいは口がすべるかもなと思いながら、朝日の記事は最初から釣りを狙ったんだろうなあと推測しつつ、流れを整理してみる。

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2008.03.19

チベット騒乱

 チベットの騒乱が起きてから、ずっと気になっております。おいらが彼の地に行ったのはもう一〇年ほど前のことだけど、ラサのお寺でバター茶を振る舞ってくれた僧侶とか、一週間近くヒッチで同乗させてもらったトラックの運ちゃんや、カイラス山を一緒にコルラしたカム族の兄ちゃん等々、旅の途中で世話になった人たちは果たして無事でいるのかと…。

 武器なんかせいぜい刀剣くらいしか持っていない人々であるがゆえ、今回の騒乱ですぐ中国共産党による支配がひっくり返ることはない。そんなことはわかっていても暴発せざるを得ないのがチベット人の置かれた状況なのでしょう。

 そういえば、ヒッチの途中で泊まった天幕の宿で酒を飲んでいるとき、酔っぱらった運転手たちが「お前、日本人だろ。あの中国人をぶん殴ってきてくれ」と宿の主人を指さしてゲラゲラ笑ったことがありました。チベットの中でも相当辺境のエリアにも漢人が入って商売しているんですね。彼らの漢民族に対する深い憎悪が感じられた瞬間でした。その手のことはよく言われたなぁ。なんで前の戦争で中国人を○○○しなかったんだ、とか。

 で、今回の件は中国という国が、人権や民族自決権の尊重、あるいは民主主義的な国家統治といった、近代においておびただしい流血の末に確立され、少なくとも先進国では共有されている価値観をまるで欠いていることを改めて露呈しました。

 しかもそんな国が経済的、軍事的に相当な力を付けてきている。プロパガンダの狡猾さは相変わらずですし。そんな中国をどう扱い、関わっていくかという問題を各国が真剣に考えざるを得ない状況をつくったという点に今回の騒乱の意味がある、というか意義を見出したいと思います。

 ですから、この段階で五輪ボイコットを明確に否定しちゃう外相とか、もう何考えているのかと。

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2008.02.06

バター不足

 たま~に散歩の途中で茶を飲みに行っていた小さなカフェが閉店するそうで。この近所はお店の入れ替わりが激しいので別段珍しいことではないんだけど、えっと思ったのは閉店理由でした。HPにはこう書いてあります。

「今般のバター不足、原材料の高騰等の事情によりましてこの度の運びとなりました」

 そんなにバターって不足してんのかと思い、価格を調べてみたら昨年の後半からずいぶん値上がりしているんだなあ。

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2008.01.04

謹賀新年

 謹賀新年。あっという間にもう3日。この先、こんな風にどんどん時の過ぎる速度が加速していくのかな? いくんだろうなぁ。

 毎年、年末には「今年の10大ニュース」的な企画をあちこちで見かますが、某所で「2007年の本当に重大なニュースはなんだったろね」という話をしていて、直感的にこれだろうと思いついたのが『1人当たりGDP、世界18位』という記事。以下引用。

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2007.12.24

グッドウィルの件

 サンドウィッチマンは中田カウスの前でヤクザネタをやったのが素晴らしいw

 グッドウイルに事業停止命令で、折口会長は代表権返上だそうで。この会社は財務が相当ヤバイという話だったなぁと思い出し、直近四半期(平成20年6月第一四半期)の決算短信を眺めてみたら、確かにこれはひどい。

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2007.12.21

似て非なるもの

 ビジネス関連の取材をしていると「リクルート出身です!」という人と出会うことが少なくない。ただ、その実態は社内で伝説の存在となっているような人から、契約社員半年くらいしか在籍していなかったような人までいるようで。

 本来なら出身者とは言えないような経歴の人が自称するのは、リクルート出身と言えばハクがつくと思っているからに他ならない。先日もちょっと名前の売れてきた自称出身者の若手経営者に対し、長年リクルートに在籍した人が「そんな名前聞いたことがない」と追求したら、やはり1年も在籍していなかったと白状したと聞いた。

 というように、ビジネス社会ではわりとリクルート出身という響きにはブランド的な価値があると思われている。実際の個人はとてつもなく優秀な人からなんだコイツな人までいろいろだが、各方面にすぐれた人材を輩出しているという点で他に類をみない会社であることは間違いない。

 で、そんなリクルートがスタッフサービスを買収するというニュースが報じられた。

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2007.11.28

船場吉兆メモ追記

 

先日触れた船場吉兆の件。新聞に出ていた同社の業績は、他の吉兆の名を冠する会社に比べて違和感あるなというようなことを書きました。それが少し気になっていたので、東京商工リサーチの企業情報をのぞいてみたら、どうも記事の通りで間違いないようで。

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2007.11.25

白い恋人メモ

 その土地ならではの何かがあるわけではないけれど、ホワイトチョコを使った商品とネーミングが北海道のイメージとうまくはまって土産物として定番化。一躍地元の名士として持ち上げられ、地域の財界活動が忙しくなり会社はほぼ番頭任せにしていても、店頭に商品を並べれば売れる状態が長年続き報酬は年1億円。それはある意味、経営者として理想的な“あがり”の状態かもしれませんが、社長が会社経営への情熱を失ったことは必然的かもしれません。

 そう考えると、白い恋人に関する問題が発覚した直後の、石屋製菓の経営者のグダグダぶりは当然の帰結といえます。なにしろ今どき、経営理念すら策定していなかったというのですから。それゆえ、その後の販売再開に至る一連の対応――コンプライアンス委員会の設置と社内調査、体制改善と保健所からの販売再開の承認取得――は手際よくスピーディーで、ちょっと意外感がありました。それで新聞記事やコンプライアンス確立外部委員会の報告書を眺めていたら、問題処理を主導していたのは銀行だったのですね。

 一連の経緯を報告書と新聞から抜き書きしておくと、次のような流れになります。

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