2009.06.25

職場の理不尽との戦い方

『人が壊れてゆく職場』笹山尚人 光文社新書

 突然の賃金カットや解雇、あるいはパワハラなど職場で起こる理不尽な事態を労働法でとらえるとどう解釈され、どんな対抗策が取れるのか。本書は労働事件を取り扱う弁護士である著者がこの問題について、実際に関わったケースをベースに解説している。その意味では理不尽な使用者に対する労働者の戦い方がテーマであり、ちょっとタイトルと内容にはズレを感じるけれど、取り上げられている事例はとても生々しく、近年の労働環境の劣悪さの一側面を切り取っていることは間違いない。

 有料職業紹介で働いていた人が突然クビを切られたケースの中で、著者はこんな感想を述べている。

<労働者派遣の事例を扱っていてよく感じるのは、派遣先の「ユーザー感覚」である。つまり、派遣先は、人間を受け入れて仕事をしてもらっているというのではなく、商品や機会を納入してもらってニーズを満たしている、という感覚を持つのである。この感覚は、派遣労働者が自らの思い通りにならないとき「不良品」「バグ」(瑕疵)といった感覚を持つことにつながる。だから「不良品」や「バグ」をなんとかしろ、と派遣元に文句を言うようになる。それは、不良品を与えられたときに正常な商品との交換を求めるように、思い通りになる派遣社員を派遣し直せという要求になっていく。思い通りにならない派遣社員を人間扱いしないのである。>

 昨今の労働者の窮状に関する分析など著者の分析にはあまり同意できないところもあるのだけれど、こうした「ユーザー感覚」が労働者を一人の人間として取り扱わず、当然の賃金支払いをしない、年次有給休暇を認めない、フルタイムでも社会保険に加入させないといった企業の行動につながっているとの指摘は、昨今の雇用問題のかなり重要な視座になると思った次第です。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.10.14

景気ってなんだろね

 金融危機の問題やら格差の拡大の問題やらで、経済に関して色んな人が色んなことを語るようになったけど、ポジショントークだったり私怨混じりだったりでどうもいまいち信憑性にかけるものが多いなぁ、という感じ。

 現在の経済状況について適切かつわかりやすく書いたテキストはないものかと探していたところ、とても良い本がありました、ありました。

景気ってなんだろう 』岩田規久男 ちくまプライマリー新書

 マクロ経済の動き方の基本的な説明を土台に、景気のディカップリング説とその信憑性、景気が拡大を続けたのに給与が上がらなかった理由、サブプライムローン問題とその影響など、アップトゥデートなテーマの分析と解説が非常にわかりやすくなされています。

 おかしな論説に惑わされないためにも、激しくお勧めの一冊です。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2008.10.04

新宿駅最後の小さなお店

 日本一の乗降客数が新宿駅というのは誰でも知ってる雑学。で、具体的な数字でいうとどのくらいなんだろうとググってみたら一日平均78万5801人(JR東日本)だそうで、そりゃあんだけゴミゴミするわけですね。

 その新宿駅東口から歩いて15秒で営業しているカフェの店主が書いた『新宿駅最後の小さなお店ベルク 個人店が生き残るには? 』は出色の経営書でした。

Continue reading "新宿駅最後の小さなお店"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.10.01

告知です

 制作をお手伝いした書籍が発売になりましたので告知など。

儲かるオフィス 社員が幸せに働ける「場」の創り方』紺野登著 日経BP社

 オフィスというと設備などの物理的な話になりがちですが、本書の焦点はそこではありません。ナレッジワーカー同士の自由闊達なコミュニケーションや力強い相互作用から新たな知を生み出すために、都市空間やサイバー空間を含めすべての働く「場」をどのようにデザインしていけばよいのか。それが本書の主題であり、国内外の豊富な先進事例に基づいて、知識社会におけるハッピー・ワークプレイスづくりのあり方を提示しています。

 オフィスづくりにとどまらず、組織やコミュニティの活性化、あるいは「場」の創出などのテーマに関心のある方は、ぜひ手にとっていただければと思います。

 また、書籍の発売と同時に未収録エピソードやアンケート等を掲載したサイトも下記URLに開設されているので、ぜひご覧になってみて下さい。

Happy Workplace 企業経営の命運を握るワークプレイス・デザインの新潮流

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.09.24

働く人にお金が回ってこない理由

 経産相の経団連に対する賃上げ要請や新総裁に決まったこの方の話なんかを見ても、今後の政府政策は労働分配率を高める方向に向かいそうな雲行きです。でも、ちょっと前まで長い景気回復が続いていたのに、なんで富は労働者に分配されてこなかったのでしょう? 日本企業は従業員重視だったはずじゃないの?

なぜグローバリゼーションで豊かになれないのか』(北野一 ダイヤモンド社)はこの問いに対して「慢性的金融引き締め」という表現を用いて説明しています。

Continue reading "働く人にお金が回ってこない理由"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.07.03

STUDY HACKS!

 『STUDY HACKS!』読了。学習を楽で快適にするノウハウの数々。一番参考になったのは著者がアイデアの実行と効果検証のプロセスそのものを楽しんでやっているところでした。

 がむしゃらに効率を追いかけるだけでは、そら続きません。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.07.02

『やる気!攻略本』

 仕事の資料を買ったついでに『やる気!攻略本』購入。俺のためにあるようなタイトルではないですか、と思ったものの、評価はちと微妙…。

Continue reading "『やる気!攻略本』"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.06.20

貧困を語る者の貧困

 下流社会やワーキングプアがメディアのキーワードになって、これらのテーマを扱った本が増えているけれど、人々の同情を集めやすいテーマであるのを良いことに、けっこうテキトーな話を紛れ込ませている本も見受けられる。

ルポ 貧困大国アメリカ』もそんな一冊。

Continue reading "貧困を語る者の貧困"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.06.01

『驚異の時間活用術』

 古本屋で糸川英夫の『驚異の時間活用術』を懐かしさで衝動買い。衝動買いったって一〇〇円ですが。確か糸川英夫の本は、職人稼業のうちの実家でも何冊か置いてあった。本書の初出は1981年で、1985年に文庫化されている。今回購入した文庫版の奥付を見ると1996年第44刷。10年以上にわたってロングセラーを続けていたことがわかる。

Continue reading "『驚異の時間活用術』"

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2008.05.13

『東京のどこに住むのが幸せか』

東京のどこに住むのが幸せか (セオリーBOOKS)』をABCで思わず購入。タイトルがうまいなぁ。

 本書の主張を要約すると「不動産を買う前に、まず街を買え」。要はどんなに耐久性や眺望のよいマンションを買ったとしても、その街自体が沈んでしまえば資産価値など消え失せてしまう、というわけです。

 では、街をどうやって選ぶのか。著者が取った手法は統計的な検証とその街の歴史的な文脈をひも解くという二刀流で、単なるマンション購入ガイドの域を超えて、とても読ませる出来になっています。

Continue reading "『東京のどこに住むのが幸せか』"

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2008.04.14

『中国の大盗賊・完全版』

 一連のチベットの出来事とそれに対する中国共産党政府の動きをながめていると、どうもよくわからないなあと素朴に思うことがあります。それは、中国政府首脳の発言です。地位のある人が平気でウソをつき、露骨な情報操作を他国にまでかける。今にはじまったことではありませんが。

 いや、どの国でも政治家は平気でウソをつくし、情報操作なんてやるのが当たり前ではあるのですが、チベットで「一種の文化的虐殺」が現在進行形で行われた結果として騒乱が起こっているのが明らかなのに、「チベットは最良の時期にある」「チベットでは宗教の自由の保護政策が実施されている」と外務省の高官が述べたりする。当地ではダライ・ラマの写真さえ持てないのにね。大国でここまでの強引さや厚顔無恥さはそんなには見あたらないのではないかと。

 どうもよくわからないなあというのは、この辺りの内在的論理が見えてこない、という意味です。そんな中、マイミクさんが紹介していた『中国の大盗賊・完全版』は中国共産党の内在的論理を知る上でとても参考になりました。タイトルからはそういう本には見えないかもしれませんが。

Continue reading "『中国の大盗賊・完全版』"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.01.07

『1997年―世界を変えた金融危機』

 一日中、部屋にこもってひたすら資料読み。

 そのなかで、某所の仕事のために読んだ『1997年―世界を変えた金融危機』(竹森俊平)が大当たり。仕事で書かなければいけないので詳細は控えますが、本書は1997年の世界的な金融危機の前後で大きく変化した世界経済の姿を「不確実性」という概念をもちいて描写するとともに、当時の危機対応がアメリカの住宅バブルと現在のサブプライム問題につながっていくプロセスを明らかにしています。

 ちょっと難解な部分もありますが、今、国際金融の世界で何が起こっているのかを知るのに絶好の一冊だと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.01.05

去年読まなかった本

 

この間のつづきね。

Continue reading "去年読まなかった本"

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2007.12.31

今年読まなかった本

大晦日。今年も本がたまる一方の1年でした。そろそろ広い所へ引っ越ししたい。

で、せっかく購入したもののまだ読んでいない本の中からとくにこいつは読みたいぞ、という書籍をいくつか。

Continue reading "今年読まなかった本"

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2007.11.20

官能小説の奥義

 文章表現の世界で官能小説が独特の発展を遂げてきたことは、世の殿方wには説明するまでもありません。考えてみるとこれだけアダルトビデオが出回り、ネットでエロ画像を簡単入手できるようになっても、活字だけで勝負する官能小説が一定の支持を保っているのはものすごいことです。その理由は、読者の官能を刺激する独自の表現を作家たちが文字どおり精魂傾けて編み出し続けてきたからなのでしょう。

 その官能小説の文体の整理と分析を試みたという触れ込みの一冊が『官能小説の奥義』。

Continue reading "官能小説の奥義"

| | Comments (2) | TrackBack (0)

2007.11.15

クリエイティブ・クラスの世紀

 11月は積ん読撲滅月間、ということで『クリエイティブ・クラスの世紀』を手にしてみたが、残念ながらこれは期待はずれ。なにしろ、「クリエイティブ・クラス」というものの定義がはっきり出てこないし、従来から提示されている「知識労働者」との違いもよくわかりません。著者のフロリダは知識労働者という概念に対する個人的な不満の結果としてクリエイティブ・クラスという概念を創出したと言っているけれど。

Continue reading "クリエイティブ・クラスの世紀"

| | Comments (2) | TrackBack (0)

2007.10.10

ヤバイ会計@NOVA

 相当売れているらしい『決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 』を読んでみる。

 本書は会社を設立しビジネスを立ち上げる中で、一つひとつのお金の動きがどのように財務諸表に反映されるのかをシミュレーションしながら、財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)のつながりを時にしつこいくらいていねいに解説し、大枠で会計の仕組みが理解できるよう構成されています。これは確かにわかりやすい。

 別に経理や会計の専門家になろうというわけじゃなく、日々の仕事の中で大づかみに会計が理解できればいいな、という人間は相当数いるでしょう。まあ、おい らがそうです。ところが、財務諸表の解説本は入門用と銘打っていても、なかなか全体像がつかめずわかりにくいものが多い。その点で本書は出色の出来と言え ます。

 著者の経歴を見ると、会計士ではなくMBAのコンサルタント。思いっきりわかりやすさに振った記述ができたのは、そのためなのでしょう。

 で、せっかくこういう本など読んだので、久々に財務諸表を眺めてみようかと。どの会社にしようと考えて、すぐ頭に浮かんだのは給料遅配や家賃不払いなどで何かと話題のNOVA。いや、金欠気味の会社はどんな風になるのだろうと思いまして。

Continue reading "ヤバイ会計@NOVA"

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2007.08.31

晩夏

 北東からの風に晩夏の気配。気温がこのくらいだと、頭も身体もよく動いてくれるなあ。

生物と無生物のあいだ 』(福岡伸一 講談社現代新書)
 分子生物学研究の進展と生命観の変遷を、謎解きのようなスタイルで読者の興味を引きつけながら記述する腕前は、とても理系の学者とは思えぬレベル。門外漢にとって決してやさしくはない本だけど、もう15万部突破だそうで。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.08.28

アクラシアな事態

 妙にナスがうまいと感じる今日この頃。この一週間はナスのタイカレー、ナスの味噌汁、ラタトゥイユ等々。

『アリストテレス―何が人間の行為を説明するのか? 』(高橋久一郎 NHK出版)

 さっさと仕事を片付けたほうがいいとわかっているのに、なぜ私たちは2chをのぞいたり、youtubeでくだらんVを眺めて時間を浪費してしまうのだろうか。本書はそんな「意志の弱さ(アクラシア)」についての議論を中心に、アリストテレスの「行為」に対する考え方を紹介する。

 アリストテレスは行動を「実践三段論法」によって説明する。実践三段論法とは何かが邪魔したり強制したりしない限り、「大前提」と「小前提」の二つの前提から、必然的に一つの行為が導かれるというものだ。大前提とは「善いもの」への欲求であり、小前提とはそうした行為を「可能なもの」にする個別的状況についての認識であるという。例えば、こんな具合…

<「私は飲むべきである」と欲望が言い、「これが飲み物だ」と感覚なり表象なり理性なりが言うと、彼はただちに飲む。>

 この文で大前提は「私は飲むべきである」、小前提は「これが飲み物だ」、そして行為は「飲む」ということになる。

 しかし、人間は「そうしたほうがいよい」という欲求と、「そうすることができる」という認識があったとしても、必ずしもそうするとは限らない。著者も<帰結するのは「私はこれをすべきである」という判断にすぎないように思われる>と指摘する。例を挙げると、デヴが「甘いものを食べないほうがよい」と知っていて、冷蔵庫に甘物があると認識したとき、「私はこれを食べるべきではない」と判断するかもしれないが、帰結としての行為はきれいさっぱりたいらげる、ということになるからだ。

 どうしてこのようなアクラシアな事態が起こるのか。著者は<アクラシアは「無知な状態での行為」である>とする。つまり、意志の弱いデヴは甘物を見つけたとき、実践三段論法の大前提を一時的に忘れてしまい働かなくなるために、おのれのメタボリックな腹回りなどお構いなしにバクバク食ってしまう、というわけである。では、なぜ大前提を持っている人が、それを忘れ、働かせなくなってしまうようなことが起こるのか。その答えとして挙げられているのが、次のアリストテレスの言葉である。

<学習したばかりの人でもロゴスを繋ぎ合わせることはできる。だが、彼等には何も分かっていない。そのためにはロゴスが相互にしっかりと結び合わされ〔性向となら〕なければならないが、それには時間を要する。>

 この辺りの議論は、わりと納得のいくものだと思われる。まず、実践三段論法の大前提にあたる「善いものへの欲求」を知ること、次にそれを性向として身につけること。そこにアクラシアを克服し、人が物事を為せるようになるかどうかのポイントがあるような気がするが、どうでしょう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.08.13

イチロー三昧

 何度も書くけど、あちぃ。無理せずたっぷり午睡。本日は昼寝三昧、そしてイチロー三昧。

イチロー素顔の青春』(吹上流一郎 ラインブックス)
 1995年7月、つまり94年にイチローが初の首位打者を獲得した翌年に刊行された本の加筆・修正版。なんというか、履歴書をなぞったような原稿。
イチロー物語 』(佐藤健 毎日新聞社)
 これも1995年に発刊された、いわば初期イチロー本。描かれているエピソードは『素顔の青春』とだいぶ被るが、新聞記者らしい文章と展開で読める。
溺愛―我が子イチロー』(鈴木宣之 小学館)
 いわゆるチチロー本。ある意味、この父親は自分の人生の重要な一時期を息子のためにくれてやったようなもの。息子は不世出の打者へと成長してけれど、一人の人生としてはどうだろね。
イチローに教えたこと、教えられたこと―高校時代の恩師が語るイチローの原石時代』(中村豪 日本文芸社)
 こちらはイチローの母校、愛工大明電高校野球部監督によるイチロー思い出話。まだ入団したての頃、二軍落ちしたときや打てないときにイチローから相談の電話がかかってきたそうで、一見、孤高に見えるイチローもこういう人たちに支えられているのだなあ。
ICHIRO―メジャーを震撼させた男 』(ボブ・シャーウィン 朝日新聞社)
 2001年、メジャーに渡ったイチローの大活躍を丹念に追った、シアトル・マリナーズ担当記者によるレポート。アメリカ人がイチローからどんなインパクトを受けていたのかがわかる。
イチロー・オン・イチロー』(小松成美 新潮社)
 メジャー1年目のシーズン終了後と、それ以前に行ったインタビューの記録。このインタビューアーは相当イチローに信頼されていると感じる。
イチロー革命』(ロバート・ホワイティング 早川書房)
 アメリカ人の視点から野球を素材に日本文化に切り込む作品で知られた著者による、日本人メジャーリーガーのレポート。当初、日本野球というテーマには「うんざりしはじめ」「吐き気さえもよおすようになっていた」が、出版社からのオファーはアメリカにいる日本人がテーマだったので、何も知らないアメリカ人のために本書を執筆する気になったという。でも、描いている対象が在メジャーの日本人になっているだけで、著者が物事を斬る枠組みは『和をもって日本となす』の頃と悪い意味で変わらない。おいらの記憶が確かなら、ですが(確かめたいが手元に本がない。これはそのうち)。過去の著書が日本野球のあり方に影響を与え、それで変化が生じた部分もあると思うのだけれど、著者自身はその変化をとらえきれていない感がするな。
イチロー 262のメッセージ』(「夢をつかむ イチロー262のメッセージ」編集委員会)
 2001年から2004年にかけてメディアで報じられたイチローのコメントを262のシンプルなメッセージにまとめ、簡単な解説を加えた一冊。よく売れているみたいです。でも、仕事としては単に色んな媒体の記事から発言を拾って集めただけに過ぎない。一応、解説が付け加えられてはいるが、その背景が必ずしも書き込まれているわけではないので、読者が言葉の上っ面をなでる結果になるであろうメッセージもちらほら。
イチローUSA語録 (集英社新書)』(デイヴィッド・シールズ編 集英社新書)
 こちらもメディアが報じたイチローのコメント集だが、アメリカの媒体で掲載されたコメントをアメリカの作家が選び集めた点と、元記事の英語が掲載されているところが異なる。見開きの右ページが日本語、左ページが英語。

 とりあえず、手近の書店と図書館で入手できたイチロー関連本の範囲はこんなところ。イチローが世に出る以前を知るには『イチロー物語 』、大リーグ挑戦という節目を中心にイチローの考え方を知るには『イチロー・オン・イチロー』がよいかな。ほかによい本があったらぜひご教示くださいませ。

 たぶんオールスターでMVPをとった今シーズン後も何冊かイチロー本が出版されると思うけど、これだけたくさん出版されていると差別化が難しいっすね。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2007.08.10

打ち水にモチベーション

 相変わらずあちぃ。でも、夜になって外出したら意外と涼しい。この部屋は最上階かつ日当たりがとてもよいせいか、夜になっても熱がこもる。ビル全体に打ち水ぶちまけたい。この差し水野郎、いや打ち水野郎と呼んでくれ。

モチベーション・リーダーシップ 組織を率いるための30の原則 』(小笹芳央 PHPビジネス新書)
 最近何かと話題のモチベーション。本書の著者は(株)リンクアンドモチベーションという、社名にモチベーションを冠した会社の創業者で、雑誌のモチベーションややる気関係の企画になると必ず取材候補にあげられる。業績もかなり好調のようだ。
 組織・人事に関するニーズは多様化している。普通であれば顧客ニーズの多様化には専門分化で対応するところだが、著者はそれらすべての背後には「社員のモチベーションを高めて業績を向上させたい」という問題意識があると判断し、自社のビジネスをモチベーションという一つのコンセプトで括り、業務を展開したという。そこに経営者としての凄みを感じる。内容についてはリンク先のアマゾンを参照くだされ。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

2007.08.08

モチベーションの逆説

 起きて資料読み2冊、原稿8枚、取材1、原稿8枚。麻婆豆腐、ビール1。あちぃ。

「儲かる仕組み」をつくりなさい』(小山昇 河出書房新社)
朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』(小山昇 ダイヤモンド社)
 ふつう、社員のモチベーションを上げたいのなら本人の自主性を尊重すべしという話が多い。ところが中小企業の経営者である本書の著者は「うちの会社に自主的に動ける人間が入ってくるわけないだろ!」と言い切る。実際、前任者から引き継いで社長に就任したとき、「幹部社員の3分の1が暴走族」で内情はボロボロだったらしい。
 ところがそんな社員たちを鍛えることで、今やこの会社は日本経営品質賞を受賞するほどの経営の仕組みを構築。著者はセミナーに引っ張りだこで年140回超の講演をこなす。
 この人はいったい何をやったのか。そのキモは、社員によいことを強制することだという。「よいことを強制すると、みんなが明るくなる」そうだ。 
 もちろん強制するだけでは社員は反発し、ごまかそうとする。ではどうやってやらせるのか。そこには著者がいう「実践心理学」に基づいた仕組みがあり、中小企業人材のどうしようもないプアーさに直面する者へ希望を与える内容になっている。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.08.06

腕や資格があっても食えていない人に

 朝から原稿。午睡。夜に再び原稿。原稿書くのが苦痛でなくなったのはいつからだったか。昔は高校の担任から「論文試験のある大学はやめとけ」と進路指導されたもんです。

戦略プロフェッショナル・ベーシック・スキル』(小笹芳央 秋山進 石井至 JMM)
 先日、売れっ子キャリアコンサルタントの方とお話をしていたら、「せっかく資格とっても、この世界で食えているのはほんの一握りですよ」とのこと。資格さえ取ればなんとかなるというのは、弁護士や会計士みたいな資格の有無自体が参入障壁になっている世界だけで、キャリアコンサルタントとか中小企業診断士といった資格をとったって、それで収入が保証されるわけじゃない。資格の世界だけじゃなく、何らかの高度なスキルを持っていたって、それだけでは食えない。

 何が言いたいかというと、もちろんテクニカルなスキルは大切なのだけど、ちゃんと仕事ができて、かつ食えるようになるにはそれ以外の要素も必用ということだ。まあ、この辺は自戒を込めて言っております(汗)。では、その要素とはいったい何なのだろう。『戦略プロフェッショナル・ベーシック・スキル』は「仕事ができる」とは具体的にどういうことかについて真っ正面から向き合い、そのために必用なスキルについて解説した一冊。

「仕事ができる」ために必用なスキルは、本書では次のようにまとめられている。
プロフェッショナルスタンス:プロとして最低限身につけておかなければならないスタンス。
コミュニケーションスキル:他者と関わりを持ちながら仕事を進めていくために必用なスキル。
コンセプチュアルスキル:仕事を進めていく上で有効な思考方法。

「腕さえよければいいだろ!」と考えがちな職人タイプの人、「資格さえ取ればなんとかなる」と安易に考えている資格厨タイプの人にとって、とても有益です。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.08.03

「相手の心の中にある宝物」

 ようやく梅雨が明け、あちぃ。午後は仕事にならないなぁ。

感じるマネジメント』 (リクルートHCソリューショングループ編 英治出版)
 本書は世界有数の自動車部品メーカー、デンソーがグローバル化した自社組織において、デンソー・スピリットを共有しようとする取り組みの物語。筆者は取り組みを主導したコンサルタントで、その視点から記述は行われている。
 企業理念やビジョンの重要性は今さら言うまでもなく、おいらも仕事で理念づくりやビジョンを共有するための冊子づくりのお手伝いをすることがあるので手に取ってみたのだが、これが意外と面白かったのでちょいと書評など。
 理念などで会社が大切にすべき価値観を明確にすることはとても大切な作業であるが、本当に難しいのはそこから先だ。立派な理念をつくっても組織に浸透させることができずに終わったケースは掃いて捨てるほどあるだろう。どこぞのコムスンみたいにみんなで唱和したって、そう簡単に社訓の類が人の心に受容されるわけではないのです。まして、デンソーのような世界中に拠点を持つ巨大グローバル企業で価値観を共有する難しさは想像を絶する。
 本書、というかデンソーのケースがユニークなのは、デンソー・スピリットを浸透させる方法論としてキリスト教の伝道に着目し、そこから価値観伝播のモデルをつくり出した点にある。伝道の要諦は「相手の心の中にある宝物」を相手と一緒に見つけながら共に豊かになることにあり、そこから「相手の心の中にある宝物」とデンソー・スピリットをつなぐ方法を筆者らは探っていったのだ。
 キリスト教の伝道については、スペインが南米でやったことなどを考えると、個人的にはろくな印象を持っていないのだけれど、それを抜きにすれば「こんな意外なところからヒントを得て、新たな方法を確立していけるのか」という面白さがあった。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.07.30

出戻り編

 参院選挙。咳がとまんね。やばい。俺は空気の悪いところに行ってはいけないと再確認。

毎日かあさん4 出戻り編』(西原理恵子 毎日新聞社)
 アル中から復活したものの、ガンを抱えて出戻ってきた夫と過ごす最期の日々。終着点の見える幸福の、喜びと悲しみなど。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.07.26

世界一やさしい

 ココログまたメンテかよorz 大学院の修論勉強会に顔出し。自分たちの代が恥ずかしくなるような熱心さと、洗練されたファシリテーション。

世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく』(渡辺健介 ダイヤモンド社)
 マッキンゼーの問題解決の手法を、中高生にもわかるようシンプルに解説した一冊。問題解決系の書籍はすでに掃いて捨てるほど出版されているわけだが、対象を中高生に置き、彼ら彼女らが主体的に生き抜くための方法論と位置づけたことで新たな輝きを生み出している。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.07.23

われらはみな、アイヒマンの息子、なのか

 近所でポリスが大量出動! しかしすぐ解散。

われらはみな、アイヒマンの息子』(ギュンター・アンダース 晶文社)
 ナチスの大量虐殺の責任者とされながら、裁判で「自分は職務を忠実に果たしただけだ」と言い放ったアイヒマン。本書は彼の息子に宛てたユダヤ人哲学者の公開書簡。
 個人が良心を放棄し「職務を忠実に果たす」ことで生み出されるおかしな事態は、ナチスほどではないにせよ、今でもそこらじゅうで見かける光景。どうしたらわれらはアイヒマン的世界に埋没せずに済むのだろうか?

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.07.22

ビジョナリー詐欺

 某茶店にて修士論文の相談話など。必用があれば遠慮なくどうぞ。おいらもさんざん諸先輩のお世話になっているのですから。

 で、この間の続き。日雇い派遣業2社の決算短信を見ていて興味深かったのが、無駄にビジョナリー志向であることだ。グッドウィル、フルキャストの決算短信の「経営方針」にはこう書かれている。

<当社グループは、企業理念である「拡大発展、社会貢献、自己実現」を基礎として、全社員が「弛まぬベンチャースピリット」を遺伝子として共有しております。>
<社員一人一人が、会社の拡大発展や社会貢献を支えていることを深く自覚し、自分の将来像を真剣に考え、それに向かって進んでいく自己実現の場を、会社が提供していくことも重要であると考えております。>(グッドウィル決算短信から引用)

<「人間としての成長を重視した雇用創造を通して社会貢献する」との基本理念をもとに、当社グループでは人生のあらゆるステージにおいて、輝きの場としての就業機会を提供し続けることのできる会社でありたいと考えております。>(フルキャスト決算短信より引用)

 これらの志高き言葉とは裏腹に、実態は偽装派遣やら給与のピンハネやら、昔の「口入れ屋」と大差なかったのは、ダイヤモンド7・14号特集「ハケンの裏側」等で取り上げられている通り。まあ、斡旋する対象が特別なスキルのない人たち、つまり未熟練労働者で弱い立場の人たちであるから、昔も今もそこにさまざまなしわ寄せがいきやすい構造ではある。だからといって現代の世に搾取などあってはならないから、法令が定められ、人材斡旋業者には法令遵守にとどまらないモラルが求められ、だから企業側も「社会貢献」を前面に打ち出しているわけだが、それらは見事にスルーされていたということだ。

 で、日雇い派遣の大手2社は立派な経営方針と実態との間に大きな乖離があるのは、先日書いたようにまともに待遇したら儲からないとか、経営が現場を統制しきれていなかったとか、もともと投資家を目くらますための作文だったとか、色んな理由が考えられるし、理由は一つじゃないのだろう。でも、根本はやはり経営者のあり方ですよ。とくにオーナー企業の経営者の場合、社内では絶対的権力者だから、ボスが右へ向けといったらみんな右を向く。向けない奴は辞めるしかない。だから、経営者が本気でビジョンを実現する気がなかったら、そんな言葉を大切にする社員はいない。

 声高に語る経営理念とやっていることがとてもかけ離れている企業は、最近わりと目につくような。それってある意味、詐欺である。ビジョナリー詐欺だよね。言っていることとやっていることの整合性があまりに取れていない状態は、とても恥ずかしいしリスクも高いはずなのだけど、身近に言ってあげる人がいないんだろうなあ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.07.19

昼のプールと入門経済学

 午前中のアポがキャンセルになったので、ジムのプールへ。平日の昼とあって見渡す限りおばちゃん、おばちゃん…。男子はおいら一人かよ。おそらく夫は定年退職しているであろう年齢層の人も少なくなかったが、彼女たちの夫はどこにいるのだろう?

スティグリッツ入門経済学 第3版』(ジョセフ・E・スティグリッツ/カール・E・ウォルシュ)
 まだ目を通している途中だが、これまでに数冊手に取った経済学の入門テキストの中では一番取っつきやすく、興味深く読める配慮がなされている。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.07.16

俺も、つくる!

 豊穣なデータの海で溺れる一日。目がいてぇ。

俺が、つくる! 』(岡野雅行 中経出版)
 ご存じ中小企業の輝ける星、岡野工業の岡野さんのお話。

「日本の企業は、誰も責任を取らないでコストのことしか言わないから、今になっていろいろな問題が出てきている。だから飛行機だって落っこちる。適正な価格を出せば適正なものができるから安全も確保されるってもんだ。でも今は、コストのことしか言わないから悪いものしかできない」
 その通りでございます。そして、この話は「日本の企業」だけでなく、「日本の消費者」にも当てはまる。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2007.07.11

ダブルキャリア

 イチローが米オールスターMVP。MVPもスゴイが7年連続出場という継続性に敬服するばかり。競争の激しい世界でそれだけ長期間、トップレベルの成績と人気を維持するのは並大抵の努力ではできない。どういう精神構造をしているんだろうなぁ。

ダブルキャリア―新しい生き方の提案 (生活人新書 227)』(荻野進介 大宮冬洋 NHK生活人新書)。
 本書でいうダブルキャリアとは、「主に会社に雇用されている人が、これからのキャリアを充実させるため、今、取り組んでいる仕事のほかに、もうひとつ別の仕事を持つこと」。小遣い稼ぎ的副業との違いは、雇用先の仕事とは別に実践的なキャリアを構築する必要性を説いている点にある。
 雇用という仕組みが個人にとって必ずしも有利ではなくなった時代において、景気変動や勤務先の都合に振り回されない自立的働き方を提案した一冊。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.07.10

ハケンの裏側

 前のテンプレートが飽きたので、オーソドックスなデザインに変更してみますた。

『週刊ダイヤモンド7/14』。特集「ハケンの裏側」で、日雇い派遣のグッドウィルとフルキャストを思いっきりぶっ叩いている。学生・プー時代にこの手の会社で働いたことがあるが、備品が自分持ちとか社名入りユニフォーム購入させられるとか、今のほうが扱いが悪くなっているように見える。

(追記)
 こちらに追加的エントリーを書きました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.07.09

小咄のテクニック

 昨日つくった茄子の味噌汁が、今晩にはもう味が変わっていた。すっかり暑くなったが、あまり季節感を感じないのは他のことで頭がいっぱいだからか。

必笑小咄のテクニック』(米原万里 集英社現代新書)
 著者があとがきで記しているように、方法論で分類した小咄集。とはいえ方法論を知ればすぐできのいい小咄をつくれるというわけもなく、やはり現実を笑いのめす意欲の有無が大事なのだと、ロシアあたりの小咄を見るにつけ思うのだった。

 本書の出版のために雑誌連載した原稿に加筆訂正をしているさなかに著者の母の容体が急変し、死去。同時に本人も悪性腫瘍に冒されていることを知る。死期の迫った時期に笑いがテーマの本を手がけ最後の著作になったことは、無責任な第三者からみれば駄洒落と下ネタを愛したこの著者らしいと言えるが、実際の心中はいかばかりだったのか。

 米原さんの著作では、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』がよかったなぁ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.07.05

タモリと目覚める日

なんとか一山越えて泥のように熟睡。
起床して、様子がへんだと思ってテレビをつけたら、タモリが画面にorz
やはり疲労の回復力は落ちるもんですな。

日本電産 永守イズムの挑戦』(日本経済新聞社編 日本経済新聞出版社)。
この社長は雇用こそが最大の社会貢献と考え、雇用を増やすために本気で会社をデカくしようとする。同じ拡大志向でもその辺の志の有無が、グッドウィルとかNOVAとかとの相違になってくるのか。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.05.07

成功ってなんだろね

ビジョナリー・ピープル』読了。

 ビジョナリーな人とは、「自分自身の成功を定義し、最低20年以上その分野で長く続く影響を与えられるようになった人」のことだという。本書はこうした、独創的な成果をあげながら、一方で自分なりに生き甲斐を感じる生活を送ってきた200人以上の人たちのインタビューに基づいて執筆されている。具体的な名前をあげられているのはウォーレン・バフェットやジェフ・ベゾス、ネルソン・マンデラやジミー・カーター、クインシー・ジョーンズやU2のボノなど多岐にわたり、それらの中には違和感のある人もいる。

 なぜ、これらの人たちは継続的な成功をおさめられるのか?

Continue reading "成功ってなんだろね"

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2007.04.17

フロー体験

 先日の書評で触れた「フロー」という概念は、元をたどると心理学者のM.チクセントミハイが提唱したものだ。大学院の知人から勧められたこともあり、彼の著書にあたってみると、これが色んなところに適用できそうな話で確かに面白かった。物質的な満足を満たした結果、かえって希望が持てなくなった現代社会において生きることの意味を喚起してくれる概念、といった文脈で今後どんどん使われていくんじゃなかろうか。

Continue reading "フロー体験"

| | Comments (2) | TrackBack (0)

2007.04.13

集中力関係数冊

 いろいろあって、どうも最近ぼさっとしている時間が増えまくりである。そんなわけで「集中力」や「スピードアップ」に関する書籍を数冊購入。

Continue reading "集中力関係数冊"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.03.26

「私を愛してください」

 PRをちょっとかじる必用に迫られて『好かれる方法 戦略的PRの発想』(矢島尚 新潮社)を通読。著者は2005年の総選挙で自民党が契約したPR会社の経営者である。

Continue reading "「私を愛してください」"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.03.20

「カモのがんばらないぞ」

連載でこんな文章を書いた後に亡くなるとは…。
ご冥福を。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2007.02.26

オマエモナー

 アイデア出しや考えがうまくまとまらないとき、オレ流でマインドマップもどきみたいなものはよくつくるもんで、『ザ・マインドマップ』(トニー・ブザン)はそのうち読まなきゃなと前々から思っていた。でも、いざ読み始めてみるとこれが見事な期待はずれ。三分の一ほど読んだところで投げ出した。

放射思考や絵と色彩を使ってイメージに訴えるマインドマップの方法自体はとても面白いのだけど、この本は言葉の定義はあいまいだわ、万能性の強調が鼻につき過ぎるわ、大して重要でない話をグダグダ垂れ流すわで、とても最後まで読む気にはならず。本書では普通のノートの欠点として「キーワードが明確でない」、「記憶しにくい」、「時間を無駄にする」、「脳の創造性を刺激しない」の4点をあげているが、それがそのまんま当てはまる感じだ。

マインドマップの作成と書籍の作成はまた別物ってことでしょーか。最近購入した本は当たりが続いていたんだけどなぁ。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2007.02.25

ぼちぼち…

 なんとか2年越しの懸案が落ち着いたので、ぼちぼちこちらも復帰しようかと。まずは最近読んだ本など。

Continue reading "ぼちぼち…"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.01.05

昨日の明日である今日を支配するもの

 そんなこんなで、某所の資料として、1999年に出版されたドラッカーの『明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命』を購入。必要な部分を読むだけでよかったのだが、面白かったので最後まで通読。

 本書は21世紀に起こるマネジメントのパラダイム転換について書かれている。著者はこれまでのマネジメントの常識は覆され、先進国における少子化やコーポレート・ガバナンスの変容などが経営戦略の前提を変え、変化を機会としてとらえるチェンジ・リーダーだけが生き残るという。さらに先進国の生存と繁栄は知識労働の生産性にかかっているとし、知識労働者1人ひとりが自らをマネジメントする重要性について考察を進めていく。

Continue reading "昨日の明日である今日を支配するもの"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.12.04

老後がこわい

 深夜、とつぜん背中に激痛が走り、こりゃ意識がなくなる前に119しないとまずいと思い、自分で救急車をよんだことがあります。結局、腎臓でちょっと大きめの石が動いただけで、命に関わるようなものではありませんでしたが(汗)。ひとりで暮らすということは、誰にも気付かれぬままこの世を去るリスクを背負っているのだと痛感しました。

Continue reading "老後がこわい"

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2006.10.09

見えざるものを観る②

 先日紹介したように『質的研究方法ゼミナール グラウンデッドセオリーアプローチを学ぶ』はグラウンデッドセオリー(GTA)の技法をゼミ形式を用い、初学者に向けて懇切丁寧に解説しているものの、その目的や全体像が明らかにされていない欠点がある。

 しかし、同じ著者が執筆した『グラウンデッド・セオリー・アプローチ 理論を生みだすまで』(戈木クレイグヒル滋子 新曜社)は対照的に、GTAの特徴とアプローチのプロセス全体がわかりやすく提示されている。この著者の解説はとにかく具体的でていねいだ。ただ、初学者は『質的研究方法ゼミナール』を先に読めと著者は勧めているが、逆の順番に読んだようが全体像がつかめてよいと思う。

Continue reading "見えざるものを観る②"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.10.06

見えざるものを観る

 質的研究法に興味を持ち、グラウンデッドセオリーアプローチをかじろうと『データ対話型理論の発見』を読んでみたものの、その難解さに四苦八苦したり、具体的な方法がわからず混乱したりした人は相当いるのではないだろうか。私もそんな一人です、はい。

 そこで購入したのが『質的研究方法ゼミナール グラウンデッドセオリーアプローチを学ぶ』(戈木クレイグヒル滋子編 医学書院)。

Continue reading "見えざるものを観る"

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2006.09.13

労働劣化

 今週の週刊ビジネス誌の特集は、はからずも4誌中3誌で労働劣化系のテーマを取り上げていた。タイトルを並べるとこんな感じ。

Continue reading "労働劣化"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.08.14

メモ

 先週8日に厚生労働省が2006年労働経済白書を発表した。大まかな内容は新聞記事の通りだが、要約版を眺めて気になったことをいくつかメモメモ。

本文版 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/06/index.html
要約版 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/06-2/index.html

Continue reading "メモ"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.07.07

清涼飲料らしいあっさり感

 そういえば最近出先でのどが渇いたとき、手に取るのはいつもサントリーの「伊右衛門」ばかりだ。そんなわけで、『なぜ、伊右衛門は売れたのか。』(峰如之介 すばる舎)を購入。

Continue reading "清涼飲料らしいあっさり感"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.06.29

衆知プレイ

 オルフェウス室内管弦楽団は「指揮者のいないオーケストラ」として知られている。一般に、オーケストラの組織は指揮者を頂点としたヒエラルキー構造であるのに対し、オルフェウスは指揮者を排除し、その役割と責任をオーケストラのメンバーで分担する。

Continue reading "衆知プレイ"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.06.28

世田谷から渋谷へ

珍しく朝、早起きしてテレビをつけると、どの局も女子大生誘拐事件の被害者インタビューで異様な騒ぎなのだった。マスコミでの露出が多い富裕者を狙う手口や、犯人が中国人と韓国人、日本人の混成部隊といった要素が絡み、妙な不安感を感じさせるニュースであった。

 そんなわけで、ここで紹介されていた『世田谷一家殺人事件』(齊藤寅 草思社)を本屋で見つけ早速購入。

Continue reading "世田谷から渋谷へ"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.06.05

1週前

一週間前の発売か…。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.06.02

ビール脳

二日前にこんなこと書いたのに、今日は同じ紙面にこんな記事が出て、職業人として心底恥ずかしくねーのかなーと思うのだけど、どうせ署名原稿じゃないし、誰書いたかわかんねーからまぁいいや、ってことなのですかね。いや、まじめに。

Continue reading "ビール脳"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.05.29

合掌

米原万里さんが亡くなってしまった…。
そんな熱心な読者ではなかったのですが、「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」はとて~も素敵な物語でありました。とくにロシア・東欧方面に興味のある方は、ぜひ手にとってみて下さい。

合掌。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.04.13

パーソナルブランド

自分のことを深く理解してもらい、相手が受ける印象をコントロールし、わざわざ売り込まなくとも相手が喜んで注文を持ってくる状況をつくりだせたら、こんな素晴らしいことはない。そのために企業は一見ムダとも思えることに湯水のごとくお金をかけ、ブランド価値の向上にやっきになっているわけだ。

で、それを個人のレベルで実現する方法を説いたのが『パーソナルブランディング』(ピーター・モントヤ他 東洋経済新報社)。たとえ勤め人であっても「個」の発揮が重要になっている今、この本が扱うテーマはとても魅力的なものである。

しかし、パーソナルブランディングへの期待感を煽りまくったイントロダクションから先に読み進めていくうち、だんだんつらくなってきた…。

Continue reading "パーソナルブランド"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.03.03

オムライス>新聞倫理綱領

「サンケイスポーツ(サンスポ)」という新聞があります。一般紙と系列関係にある日刊スポーツやスポーツニッポンとは異なり、株式会社産業経済新聞社(産経新聞社)が直接発行している、プロ野球ファンには阪神ファン御用達の媒体として知られた存在です。

サンスポに掲載される中日ドラゴンズの記事はしばしば嫌味と揚げ足取りに満ちあふれ、その凋落を密かに願っているかのように見えます。しかし、それは当然というものです。サンスポは阪神ファンを喜ばせるのが第一の使命であり、かつドラゴンズの親会社たる中日新聞社は産経新聞社の競合会社なのですから。昔はどんなに電波な記事でも購買者以外に届かず済んでいましたが、今はネットでそれ以外の人の目にも触れてしまう。これはいたしかたのないことでしょう。

以上のコンテクストを理解していればサンスポのドラゴンズ番記者、兼田康次氏が執筆する極めてユニークな記事の数々も生暖かく見守れるというものです。が、しかし、時おり本当にその真意の解読が困難な記事が載ることがあって、読者を困惑させてくれます。そんな記事が先日もありました。ちょっと引用してみましょう。

Continue reading "オムライス>新聞倫理綱領"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.02.28

全部でいくら?

『使えるレファ本150選』(日垣隆著 ちくま新書)はジャーナリストとして幅広い分野で健筆をふるっている著者が、ものを書いたり調べたりするのに役に立つ「レファ本」(参考図書)150点をズラリと紹介した一冊。辞書や白書はもちろん、値段の年表やら生活の図鑑、テレビドラマ史等々、その守備範囲は一人で内野全部やっているような広さっす。

ある意味、ネタばらしをするかのような企画でありますが、紹介している150点は著者が使用しているレファ本の一部に過ぎないであろうことは本書の端々に現れているし、持ち主に使いこなす能力があってはじめてレファ本が生きることは、日垣氏の他の著書を読めばすぐわかります。要するに、そう簡単に追いつける人間はいないということなのでしょう。

で、この150点を全部購入すると、果たしていくらになるのか?

Continue reading "全部でいくら?"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.02.09

組織デザインの徒労

それにしても、朝日新聞の気色悪いキャンペーンはなんなんだ。末期症状か?
腐った、とまでは言わないにしても、うまくいかなくなった組織を立て直し、いかに生産性を高めていくための解決策の一つとして、組織の形をどうデザインし直すか、といった議論をすることがあります。
でも、そういった議論がはじまると徒労感に襲われることが多いのは勤め人時代、どう組織の形をいじったって、お前らが上に居座っている限りロクな会社になるわけねーじゃん、という実にくだらん経験をしたからなんだろうなぁ。
要するに、目に見える形を変えるだけのアプローチだけでは、組織が活性化することなんてないと思っているわけです。

その点、企業体質変革の方法論をテーマにしたこの本は面白かったです。

Continue reading "組織デザインの徒労"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.02.07

ダメ男

やっと仕事が落ち着いてきた、と思ったら院のレポートの〆切が一週間も過ぎていやがりますた(汗)。仕事以外になると、途端に気が抜けてダメ男ちゃんになる今日この頃です。

ダメ男といえば、芥川賞を受賞した絲山秋子氏の一連の作品が面白い。

Continue reading "ダメ男"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.01.23

ユーレカ!の快感

本日は1ヶ月ぶりの休日でありました。昼起きてスポーツクラブで泳いでヨガやって酒飲んで終了。と思ったんですが、本当に何にもしないのも落ち着かない。貧乏性ですな。で、積ん読してある本の中から一番薄いのを引っ張り出して読んだら、けっこうな当たりでした。

Continue reading "ユーレカ!の快感"

| | Comments (4) | TrackBack (0)

2005.11.22

「地に根ざした理論」再び

前回掲載した『データ対話型理論の発見』の書評ですが、某所でもう少し詳しく書く機会があったので、こちらにものっけておきます。ご参考まで。

社会学研究では偉大な先人たちがつくった理論の検証に重点が置かれ、新しい理論の創出がないがしろにされている――。『データ対話型理論の発見』はそんな状況を批判し、あらかじめ設計された統計的調査等だけではなく、インタビューやテーマに関連する小説、手紙などさまざまなデータを獲得し、それらを比較、対話することによって、新たな理論を発見することの重要性を主張している。原著のタイトルが”The Discovery of Grounded Theory”、すなわち「データに根ざした理論の発見」であることを見るだけでも、思弁だけで物事を認識し構築された、現実には適合しない”Grand Theory”(誇大理論)に対し、強く異を唱えている著者の立ち位置がわかるだろう。

では、「データに根ざした理論の発見」をどうやって行なうのか。そのポイントになる主要なアイデアが「理論的サンプリング」、「絶えざる比較法」、「理論的飽和」である。
○「理論的サンプリング」
「理論を産出するために行なうデータ収集のプロセス」を指す。これは統計的サンプリング(無作為抽出法)と対比してみるとわかりやすい。すなわち、理論的サンプリングはカテゴリーとその特性を発見し、それらの相互関係を一つの理論としてつくり上げるために行なわれるのに対し、統計的サンプリングは各カテゴリーにおける人々の分布状況の正確な証拠を得るために行なわれる。理論的サンプリングは「理論の産出」が目的であるから、前述したように扱うデータは必然的に広範かつ多様なものとなるわけだ。
○「絶えざる比較法」
体系的に理論を産出することを目的に、データ収集とコード化、比較・分析を同時に行うこと。具体的には、次の四段階となる。
 ①各々のカテゴリーに適用可能なできごとを比較する段階。
 ②複数のカテゴリーとそれらの諸特性を統合する段階。
 ③理論の及ぶ範囲を限定づける段階。
 ④理論を書く段階。
○「理論的飽和」
あるカテゴリーの特性をそれ以上発展させられるデータがもう見つからない状態のこと。ある一つのカテゴリーが飽和してきたら、後はカテゴリーに関して新たな集団へ向かい、そこでの飽和を目指す。

また、著者はデータ対話型理論が実践的に適用されるためには、次の四つの特性を持つ必要があると強調している。
 ①理論が活用される特定の対象領域と緊密に適合していなければならない。
 ②その特定の対象領域に関心を持つ一般の人々にも平易に理解されなければならない。
 ③特定領域内の、さまざまな日常生活状況に対して十分適用可能な一般性を持ち合わせなければならない。
 ④その理論を用いたものが、時と共に変化して行く日常生活状況の構造と展開を部分的にせよコントロールできるようにならなくてはならない。
見方を変えれば、この4つの特性がデータ対話型理論の存在意義であり、最終的に目指すべき地点といってもよいだろう。

さて、グラウンデッド・セオリーに対する筆者の感想は次の通りである。
○思いもよらぬ理論展開への発展が期待できると同時に、内容のリアリティや現実の場面での有用性をも担保する、極めて魅力的な方法論。ジャーナリズムへの応用も考えられよう。
○複数の人間の観察でデータを集めることにより、単独では難しい多様な視点の獲得と分析が可能になる。
○一方、コーディングにおける作業の膨大さ、データの切片化でコンテクストを解体することによる重要な要素の見落とし、そして「理論的飽和」という概念は研究活動には適用できても、期限の縛りの厳しいビジネスにおいては適用しにくい、といった問題がある。
○何より、粘り強い思考とデータ収集作業を必要とするため、とっつきやすさから安易に手を出すと、中途半端な結果に終わる危険性が高い。

今後は実際にグラウンデッド・セオリーを用いて執筆された論文の読み込みを通じさらに理解を深め、現在の研究テーマに適用できるかどうか検討していきたい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.11.13

「誇大」理論と「地に根ざした」理論

某所の課題図書として読んだ『データ対話型理論の発見』(B.G.グレイザー A.L.ストラウス 新曜社)は、理論の創出を奨励した社会学の古典的名著、だそうです。社会学研究と縁遠い人間には記述がかなり難解かつ、原著が出版された時代の状況がよくわからないため、正直、どこまで理解できていのか心許ないのですが、とりあえず以下に内容をまとめてみますた。


社会学研究においては、偉大な先人たちがつくった理論の検証に重点が置かれ、新しい理論の創出がないがしろにされている…。本書はそんな状況を批判し、あらかじめ設計された統計的調査だけではなく、インタビューやテーマに関連する小説、手紙などさまざまなデータを獲得し、それらを比較、対話することによって、新たな理論を発見することの重要性を主張する。原著のタイトルが”The Discovery of Grounded Theory”、すなわち「データに根ざした理論の発見」であることを見れば、思弁だけで物事を認識し構築された、現実には適合しない”Grand Theory”(誇大理論)に対し、強く異を唱えていることがうかがえよう。

では、「データに根ざした理論の発見」をどうやって行なうのか。そのポイントになる主要なアイデアが「理論的サンプリング」、「絶えざる比較法」、「理論的飽和」である。理論的サンプリングとは「理論を産出するために行なうデータ収集のプロセス」のこと。このプロセスを通じ、分析者はデータ収集とコード化と分析を同時に行なう「絶えざる比較法」を実践し、あるカテゴリーの特性をそれ以上発展させられるようなデータがもう見つからない「理論的飽和」が起きるまで継続する。

これを超訳すると、関連のある情報ならば積極的にデータとして採用し、それらをさまざまな角度から突き合わせ、新たなアイデアの産出が尽きるまであれこれ考えていく、ということになるだろうか。前述したように、本書はろくにデータとの対話を行なわず理論検証に偏った社会学のあり方に対するアンチテーゼとして記されたが、集めた情報を読みやすく並べるだけに終始しがちなライターという仕事にとっても、現実に適合した深い分析と理論の創出を可能にする有用な道具となるかもしれない。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

2005.11.07

古本“だけ”の街でよいのか?

IMG_1203
先週の神田古本まつりは相変わらずの賑わいでありましたが、やはり客層はオッサンが多いですな。もう少し若い人や女性に対して訴求できないと、将来的に厳しいものがあるんじゃないでしょうか。必要なものをさっさと購入する機能に関しては、いくら世界一の古書店街といってもネットにはかなわないわけだし、まして客との情報格差を利用して古本を高値で売りつけるだけの商売なんて、先行き暗いだろうと思います。

IMG_1205
そもそも神保町の古本屋の店員を見ていると、寝ぐせつけたまま店に出てくんじゃねえよ、とか、もう少し小ぎれいな服装をしたらどうよ、客商売なんだからさ、と仕事に対する根本的な姿勢に疑問を持つことがしばしば。ただ一方で、カフェっぽい内外装の洒落たお店も見かけるようにはなってきて、この街でも時代の流れに合わせ、変化は起こりつつあるのかなと感じた次第。重厚な店構えで知られる北沢書店の1階も、ゆったりとした空間に絵本や美術書を並べた「BOOKHOUSE」に改装されておりました。実物を手にとって見たい系の本を中心に揃えているのが肝なんだろうな、きっと。

それから最近、おいらも制作のお手伝いをした神保町のオフィシャルサイト「BOOK TOWN じんぼう」がオープンしました。ほぼすべてのお店を網羅した充実の古書店ガイドや、連想検索を駆使した「ジンボウナビ」など、楽しめる情報と機能を満載していますので、神保町や古書に興味のある方はぜひぜひお立ち寄りくださいませ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.08.23

青山ブックセンター自由が丘店復活!

aoyama
突然青山ブックセンター(ABC)が倒産したのは、ちょうど1年ほど前のことでした。私が愛用していた自由が丘店も閉店し、空いたスペースにはブックファーストが新たに入居。しかし主の入れ替わった店舗は本を天井まで詰め込んでいるせいで圧迫感があり、かつ品揃えが私の必要としている分野については薄いので、ABCに通ったほどには足を運ばなくなりました。渋谷店は好きなんですが。
で、その分どこへ行ってたかというと、昔長崎屋があったビル2階の芳林堂書店。こちらはちっとも垢抜けていない店作りではありますが、品揃えが自分に合っていたのです。
ところが、芳林堂もオープンからそれほど時間がたっていないのに、急に閉店を決めそそくさと撤退。なんだよ、出版業界はまだ景気の底を打っていないのかよと嘆息していたら、なんと跡地には復活したABCが入るようであります。
以前の店舗よりは駅から少し遠くなりますが、スペースは広くなると思います。さて、どんな店作りをしてくるのか。
オープンは9月9日です。
aoyama2

| | Comments (4) | TrackBack (1)

2005.05.01

常任理事国(笑)

あれだけヒステリックに日本の責任だと政府要人が口角泡飛ばしていた中国の反日デモ騒ぎだが、一気に目立った動きがなくなったのは苦笑するしかない。やっぱり、きちんと統制できるんじゃないっすか。
それにしても、まともな情報を与えられていない、幼稚な顔の兄ちゃんたちが馬鹿騒ぎに酔い痴れるのはともかく、国家のトップ層まで児戯じみた挑発発言をしたり、デモでの暴力沙汰を容認したりした背景がどうもよくわからない。いや、いろいろな解説はすでに出されているけれど、一定水準の経済成長の維持が死活問題の局面で、日本と正面切ってケンカするのは得策ではないし、北京オリンピックを控えてあんな騒ぎを容認すれば国際的な評判が地に落ちる可能性ぐらい、まともな為政者なら考慮するんじゃないのかなぁと思いつつ、たまたま本屋で見かけた「中国はなぜ『反日』になったか」清水美和著 文春新書)を購入。これがなかなかのグッジョブだった。

本書によれば、中国が「反日」を鮮明にしたのはこの10数年、江沢民が実権を握って以降のことだという。その背景には天安門事件で得た「教訓」に源を発する愛国主義教育の徹底や、政治基盤の脆弱な江沢民が権威を確立するため対外的に強硬姿勢を取る必要があったこと、マスコミや電脳空間で「反日」が増幅され、それがまた政策に跳ね返るメカニズムがあることなどがコンパクトにまとめられている。「靖国」問題への反発は、単に歴史問題だけではなく「面子」問題や日本側の戦略レスが絡んでいるといった指摘も参考になる。

本書は最近の事象だけではなく戦後から現在に至る日中外交史がカバーされており、毛沢東や鄧小平がいかなる戦略に基づいて日中友好を演出する一方、戦争の当事者だった人々の反日感情を抑えていたのかの解説は読み応えがある。「友好」とは奇麗事だけではないのねん。歴史的評価はともかく、毛沢東や鄧小平の傑物ぶりに比べると、日本の政治家はいかにもスケールが小さく、視野も狭かったと感じさせられる。
また、中国の政治家にとって「親日」が致命傷になりかねないという事実は、中国の動向を見る上で、ぼくらはぜひ頭に留めておくべきだろう。若者の乱痴気騒ぎをたしなめるのさえ、政治生命を失いかねないリスクになるわけだ。
中国の対日政策の背景と歴史的経緯を知る上で、本書は格好のテキストになろう。

ただ、平成15年に出版された本書は終章で「中国が近い将来、党・政府として再び90年代半ばのような『愛国』キャンペーンに乗り出す可能性は極めて低い」と予測しているが、残念ながら現状は周知の通りである。
予測がはずれた要因を考えると、江沢民に連なる魑魅魍魎が跋扈しているのかなとか、日本の常任理事国入り問題とか、台湾問題とか色々あるのだろうけれど、根本的には資本主義導入で共産党政府が一党独裁制を敷いている根拠が薄まった現在、反日ぐらいしか自党の存在理由を強調できない点にありそうだ(これはどこかで見かけた見解なのだけど、出所を失念してしまった…)。
いずれにせよ、チベット弾圧など今なお時代錯誤的な統制を行っている国連常任理事国(笑)である。日本側が主張すべきことを主張し、まともに対応すればするほど色んなボロが出てくる。生暖かく見守るのが吉だろう。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

2005.04.16

長くて薄いの

脳を活かす! 必勝の時間攻略法」(講談社現代新書)は、単なる時間「活用」ではなく「脳」を活用した時間「攻略」ってタイトルがうまいなぁと思いつつ手に取った。
本書にはバイオの研究の傍ら国家公務員試験Ⅰ種経済試験に合格し、NHKでアナウンサーとして活躍した後医師免許を取得し、衆議院議員秘書を経て現在は東大医学博士課程に在籍するという、やたら略歴が長い著者による時間攻略法のノウハウが書かれている。

無駄な時間を削ることに腐心してつまらん奴に成り下がるのではなく、脳を活性化して一日を48時間分活用しようというコンセプトには大いに共感するし、脳の機能をわかりやすく説明しながら時間の「攻略法」を提示する文章の運びはさすが元アナウンサーという流暢さ。自身の体験の中から編み出した15分刻みの集中法やポストイットの活用法など、これは使えそうだという方法も多い。

でも、なんか薄いな…。

それは、すでにけっこう流布している話をわかりやすく書いているだけの部分が多いとか、医者のくせにゲーム脳を例に出しちゃう安易さとか(きっとこの人はゲーム脳本を読んでいないのだろう)、いくつか要因はあると思うのだが、つまるところはいろんな分野に足を突っ込む器用さを持ちながら、どこ目指しているのかよくわからないこの人の経歴に根本的な原因があるのかな、という気がする。
要するに、何のためにそんな頑張るの、という点が本書からは見えないってことですよ。
ノウハウ本としては決して悪くないが、惜しい。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2005.02.22

ベスト7

社会人のオキテ」が丸善丸の内本店のビジネス書ベスト10に入っておりました!
以下丸善サイトより転載。

最新集計日2005年2月10日~2月16日

ビジネス
1 鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」 勝見 明 プレジデント社 1,299円(税込)
2 これだけは知っておきたい個人情報保護 岡村 久道 日本経済新聞社 525円(税込)
3 プロ論。 B-ing編集部 編 徳間書店 1,680円(税込)
4 経営者、15歳に仕事を教える 北城 恪太郎 丸善 1,575円(税込)
5 逆転戦略 鈴木 貴博 監修 ダイヤモンド社 1,785円(税込)
6 BSCによる銀行経営革命 小南俊一、谷守正行 きんざい 2,100円(税込)
7 社会人のオキテ 大條充能 実業之日本社 1,260円(税込)      ←コレ
8 給料と評価の革新 弥富 拓海 中経出版 2,310円(税込)
9 右脳速読 田島安希彦 ゴマブックス 1,600円(税込)
10 黄金のおにぎり 高橋朗 ナナ・コーポレート・コミュニケーション 1,365円(税込)

いや、嬉しかったもんで、つい。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

2005.02.19

社会人のオキテ

okite

私が製作をお手伝いした本が発売になりました。
タイトルは「社会人のオキテ」。著者は「ダ・ヴィンチ」誌などで人生相談コラムを連載し、
文末がすべて「~だぜ!」で終わる妙に熱い文体で人気の大條充能氏です。

大條さんは高校卒業後、お笑い芸人になり損ねたまたまリクルートに入社した変り種。
しかし、そこから目立とう精神旺盛なリクルート社員の中で名物男として頭角を現し、
社内イベントでの大失敗を期に二十歳そこそこで当時の江副社長から目をかけられたり、
26歳にして社内報の人生相談コーナーの回答者になったり、社内で特異な存在感を
発揮してきたユニークな人物です。
業務面でも優れた実績を残し、当時の最年少マネージャー職昇進記録を更新した上で
総務アウトソーシング会社ゼロインを設立し独立。実にパワフルな人生です。

一介の地方の高校生がリクルートという競争の激しい会社の中で自分の道を切り開き、
ベンチャー経営者にまでなった背景には、尋常ではない奮闘努力とそこから学び取る
努力の継続があったわけです。本書では大條さんが自らの経験とそこから身につけた、
世の中を生き抜き自分の居場所を作り出す知恵を50の「オキテ」としてまとめました。
曰く「仕事を選ぶな!」「キャリアプランなんか立てるな!」「英語の前に敬語を学べ!」
「嫌な奴は徹底的に叩き潰せ!」「ピンチのときはイエイと叫べ!」「あきらめろ!」etc

編集者の努力で、面白くて読みやすい、かなりいい感じの仕上がりになりました。
これから社会に出る方、働き始めたけどいま一つ突き抜けられない人、
最近自分が面白くないと感じている人、ヒントと元気の欲しい人、とにかく
面白い本を読みたい人――ぜひ手にとってみて下さい。自信作であります。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.11.28

剥落宣言!

おかげさんで、だいぶ腕はラクになりました。
で、気になっていたことをぼちぼちと。

先月、「ファイナンシャル ジャパン」という雑誌が創刊された。
「メディアの論調と世論の高まりに無視し得ぬズレが生じるようになりました」で
はじまる創刊の辞「伯楽宣言!」の執筆者はご存知木村剛氏。
本誌は木村剛責任編集なのである。
ネットの普及で情報革命が現実化し、個人の情報発信力も強化された今、
玉石混交の情報の玉と石を選り分ける敏腕の目利きが必要で、そこに
ファイナンシャル ジャパン創刊の理由があると氏は意気込みを語る。
「一流や本物になるためになすべきことを伝える総合誌でありたい」という。

で、ページをめくると巻頭コラムが現れる。執筆者は西川りゅうじん氏。
へっ? とここで思ったのはぼくだけだろうか。西川氏は「玉」だったのか?
コラムの内容も、首都圏の不動産動向について都心回帰の「あんパン化現象」から
自分の価値観に従って住む場所を決める「ピザパン化現象」の様相を呈しつつあると
言葉遊びを連ねた上で、つくばエクスプレス開通を引き合いにして、今後は
アクセスの良い郊外都市が買いと“ご卓見”を披露する。
プロフィールで「昨今の焼酎ブームを演出」と書いちゃうあたりも含め、
相変わらずの芸風である。
ぼくの好き嫌いをさっぴいても、新たな時代のパラダイムに対応せんとする
雑誌の巻頭にもってくるコラムとしてはどうよ、と思うわけだ。

個々には読み応えのある記事もある。
だが、たとえば第二号の表紙はオリックスの宮内会長をもってきて
勝ち軍の将、兵を語る」とコピーをつけちゃうあたり、どうなのか。
確かにオリックスは勝ち組ですよ。でもね、プロ野球の再編騒ぎ見ていた人は
「一リーグ制導入を目論んで失敗したケチックスは勝ち組でつか?」と間違いなく
感じるわけですよ。あるいは、近鉄からいい選手だけかっさらって残りは楽天に
払い下げたオリッ鉄は勝ち組かもね、と生暖かく表紙を見つめることだろう。

もちろん、ぼくは新たな雑誌の創刊を心の底から歓迎する者であるのだが
(ライターっすから)、
本誌のスタンスには、世間とのズレを感じるところがある。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2004.11.11

究極の電波力

30代に突入した頃から、秋が深まるにつれ調子が最悪になる。まずろくに声が出ない
ほどのどが腫れ上がり、やがて気管支が炎症を起こし喘息が目を覚ますという具合。
さすがに毎年のことなので、そのたびに近所の耳鼻科専門医から地域の総合病院、
そして大学病院までいろいろ回ったのだが、結局どこへ行っても良くはならなかった。
どこでもおざなりの診察して「じゃ、薬あげるから様子見て」攻撃で終わるのだから、
そりゃどこでも同じ結果になるわなぁ。
ところが、世田谷からは遠いが評判の良い有数の専門医で昨年診察を受けたら
「根本的な原因は鼻にありますね。鼻炎で鼻がつまり口呼吸となり、そのせいで
のどや気管支がやられているんだと思います」
と目からウロコの診察。本人はのどの痛みの方がつらいので気付かなかったが、
実際、蓄膿症&アレルギー性鼻炎の治療を受け、鼻呼吸を心がけたところ、
数年間続いた、慢性的なのどの痛みにもだえ苦しむ状況はなくなった。
今年も少しのどが腫れ油断はできないが、以前と比べればかな~り楽な水準である。
いや、病院&医師選びは本当に大事っす。

前書きが長くなったが、そういうわけで「鼻呼吸」「口呼吸」に興味を持つようになり、
「冷たいもの中毒と口呼吸と睡眠不足が、現代日本人の身体をむしばんでいる」
という帯書きのついた「究極の免疫力」(西原克成著 講談社インターナショナル)
という本を見つけ購入してみた。
著者紹介によると「人口歯根、人口骨髄の開発における第一人者」だそうである。

で、強引に内容を要約すると、ばい菌を取り込んでしまう口呼吸をやめ、冷たい
ものの摂取をやめて恒温動物らしく常に体温を保ち、直立歩行による重力ストレス
から身体を解放するため十分な睡眠を必ずとる。すなわち哺乳動物の一員として
生命の決まりを守った生き方をすれば健康に生きられる、ということだ。
この辺の主張は自分の経験を踏まえ、大いに肯定できる。

ただこの本、電波交じりといいますか…。なんでも、進化の過程ではサメが陸上に
上がって、哺乳動物型の爬虫類が発生したんだそうです。へ~へ~へ~。
そのあたりのことを詳細に追求する知識も気力もぼくにはないのだが、同じ著者の
別の本について、ここに詳しい書評があったのでご参考まで。
何より最悪なのは、本書は一般向けに書かれたと思われるにも関わらずやたら
専門用語が飛び交うわ、構成に脈略はないわで、素人にはさっぱり理解できない
代物である。「強引に内容を要約」したのはそういうわけっす。
なんとかしろよ編集者。アマゾンで「分かりやすい」とか書評を書いているやつは、
よっぽど頭がいいんでしょうな、きっと。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2004.11.01

プロジェクト“新書”

気軽に手を伸ばせる敷居の低さは魅力的だが、あまりの出版点数の多さにどの本を
選べばいいかさっぱりわからない供給過多ぶりを呈しているのが新書の現況。
そんな情報洪水に溺れる者を救うべく、男たちは新書ガイドの発刊に立ち上がった!

新書マップ~知の窓口~
編集 新書マッププレス  日経BP社刊

本当は男たちだけでなく、制作には優秀な女性たちも大いに関わっているわけですが。
本書は約7000冊の新書を32分野、1003のテーマに分けて書誌データを紹介している
ほか、約2000冊については読書ガイドが付けられています。
要は新書マップの内容を書籍化したもので、約20人のジャーナリストや研究者が
作成に協力しています。私は主にビジネス関連の分野をお手伝いいたしました。

1000ページ超とかなりボリュームあります。かさばります。重いっす。
でも、パラパラとめくっているだけで、けっこう楽しめると思います。
同じ内容でも、Webで見るのと書籍で読むのではけっこう違うもんですな。
新書の世界に興味があったら、ぜひご一読を。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.10.29

ダイヤモンドは永遠に

ライオンズが日本一、松坂選手の婚約発表とめでたい話つづきなのとは裏腹に、
堤さんちの義明くんのところはいろんなことがバレてそりゃもう大騒ぎさ、という
状況なのだが、何が出てきてもあまり意外感がないのは、コクドグループのおかしな
体質は何年も前からさんざん伝えられていたからだろう。
堤氏に関して独裁者、といった批判はもはや紋切り型の感すらある。
それにも関わらず今まで深い闇にメスを入れられなかった経済ジャーナリズムは
ろくな仕事をしていなかったと言われても仕方ない、おいらも含めて。

で、堤義明氏に関する色々な記事が出回る中で出色の出来だったのがダイヤモンド
今週号(10月30日号)巻頭のコラム「ヲブセルウェーション」である。
独裁者の生い立ちの哀しみにまでさかのぼり、不祥事の根源を指摘する筆の冴えは
ぜひ書店で手にとってご覧いただきたいと思う。

最近のダイヤモンド誌は北朝鮮特集といい創価学会特集といい読ませる記事が多い。
あまりメディアで見かけることのなかったロッテのトップを引っ張り出してくるあたり、
気合入りまくりである。
それは凄腕の経営者である高塚猛氏が社長に就任したことが背景にあるのかな、と
思っていたらあっという間に退任し、ご存知の通りセクハラで逮捕されてしまった。

さて、高塚氏の事件について、ダイヤモンド誌はどう書くのだろうか。
現編集長は「会社再建―福岡を燃えさせた男高塚猛の軌跡」の著者でもある。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.10.09

新書の歴史

新書シリーズがあちこちの出版社から出るようになって、新書の刊行点数は
93年に2589点だったものが、03年には3378点と10年で約30%増加している。
しかし、推定発行部数は93年が4654万冊だったのに対し、03年は4475万冊と
10年前よりむしろ絶賛減少中だ。データは出版指標年報。
新書市場では、限られたマーケットの中でパイの食い合いが繰り広げられるという
成熟市場にありがちな状況に陥っているわけだ。しかもそれは出版業界全体にも
合致する傾向であろうことを考えると、果たしていつまでお気楽ライター稼業なんて
やっていられるのかと、新書の歴史をまとめていたら気が滅入りますた。

新書マップWebマガジン【KAZE】風
新書 いま・むかし

あるようで意外となかった新書略史っす。
興味のある方はご一読を。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

2004.09.01

ぼくがニートだった頃

ぼくがニートだった頃、一番困ったのはどこにも居場所がなかったことだ。
お金なんてあるわけないから、親に甘えて実家に置いてもらっていたが、
何も言わないけど確実にこちらを凝視している周囲の目がきつかった。
それでとりあえず毎日家を出るのだが、行くあてはどこにもない。
しょうがないから図書館行って本でも読むか、天気のいい日は多摩川の河原で
ビールを飲んで昼寝でもするしかなかった。
はたから見たら、いい年こいてぶらぶらしやがってと思われただろうけど、
本人は見た目ほど気楽ではなかった。
社会に出た友人たちは忙しく働き、収入格差もあるから気軽に声をかける
ことができなくなり、何となく疎遠になっていく。新しい仲間ができる機会なんて
あるわけもない。そうやって物理的だけじゃなく、精神的にも社会的にも
自分の居場所がじわりじわりと狭まっていく感じにはかなり参った。

ニート―フリーターでもなく失業者でもなく」(玄田有史 曲沼美恵)は
その辺りの当事者の焦燥感にも焦点を当てている点が新鮮に感じられた。
本書は玄田氏による各種データに基づいたニートの分析と、曲沼氏による
ニートである数人の個人のレポート、そして有力なニート予防策と考え
られる、すべての14歳に1週間にわたる職場体験を行わせている神戸と
富山の事例レポート、両著者の見解へと続く。
なぜ、中学二年生のときに濃密な職場体験を行うことがニート予防策に
なるのか。それは「志望する職業を確立する」といったことではなく、
世の中でなんとかやっていけるというささやかな自信を付けたり、
夢の職業でなくても働くことは意外と面白いものだと感じたり、社会との
かかわりを持つ術を身につけたりすることが重要だからという。
ニートなる若者に共通する特徴は「孤立した人間関係」や「自分に対する
自信の欠如」「中学・高校時代からの状況の継続」なのである。

ニートというと、やはり「働く意欲のなさ」という文脈でとらえられ、
その甘さを批判されることが多いわけだが、著者が率直に記しているように、
この問題の根本的な理由はまだよくわからないけれど、少なくともそうした
表層的な認識では解決できないことが本書を読むとよくわかる。
とくに街ぐるみで実施している、中学二年生の1週間にわたる職場体験の
取り組みのレポートは興味深い。こうした取り組みが「居場所」を失う人を
減らせるかどうか、ぼくもウォッチしていきたいと思う。
ただ、ニート当事者への取材はもっと人数を多くした方がよかった。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.08.18

岩波新書 新編集長インタビュー

岩波新書でこの4月、33歳の新編集長が誕生しました。
一番古い新書シリーズなのに思い切った人事をするなぁ、と
思っていたら、先日インタビューする機会をいただきました。

新書マップWebマガジン[風] 「新書」編集長にきく

上記サイトに記事が掲載されています。
興味のある方はご一読を。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.08.16

「三菱車は、本当に×か」は×か?

CARトップという雑誌がある。表紙でアイドルがニコッと微笑んで、中身は
試乗インプレッションが続くという、自動車専門誌の一つだ。
ぼくは自動車にあまり興味がないのでこの手の雑誌は買ったことがないが、
その臨時増刊として出版された「三菱車は、本当に×か」は思わず手に取った。
「第一線で活躍する、自動車ジャーナリスト49人が語る『ミツビシ』」という
サブタイトルが付けられた本書は広告一切なしで390円。三菱自動車の不祥事を
受けて、本書はスポンサーであるメーカーに収益を頼らない形で出版したらしい。
広告なしの別冊を出したからといって、広告料が欠かせない出版社の収益構造が
変わるわけでもないだろうが、自動車専門誌として何か発信しなければという
姿勢は、頭を低くして嵐が通り過ぎるのを待つ輩よりはよっぽどマシだろう。
「ミツビシは何たって、悪いことは悪いのです。でも上段から悪いぞって見降ろすのと、
悩みぬいてそして、バカヤローと叫ぶのは、全然違うことだと思います」という
編集人の言葉は全面的に同意である。

でも、49人もの“第一線の自動車ジャーナリスト”がそれぞれ文章を寄せて
いるのだが、読む価値のあるものはほんの少ししかない。
「マスコミの三菱バッシングは行き過ぎ」
「現場、技術者は真面目な人が多い」
「悪いのは一部の上層部。三菱頑張れ」
そんな風に事象の上っ面を撫で回した文章がずらっと並び、うんざりするばかり。
ジャーナリストならではの見識や、ユーザーにとって有用な情報など、読んで
意味があったと思える内容が示されているのは清水草一氏や岡崎五朗氏、鈴木
直也氏ぐらいじゃないだろうか。少なくとも学生の作文レベルや、ろくに調べて
いないのが丸分かりの記事は勘弁してほしい。
結局、試乗インプレッション記事を中心としている人たちに、このテーマを
書かせたことに無理があったのか。
それとも、彼らには接待攻勢の毒がまわっているということなんでしょうか。
こちらは参考まで。

これは自戒を込めて言うのだが、企業や商品を紹介する記事を書くということは、
結果的にその広報活動につながるということでもある。そこでは当然、書き手の
見識や責任が問われる。広報の言うことを垂れ流すだけなら存在価値がない。
ただ、注意していてもヘマをすることがある。リコールと同じで、そんなときに
どんな対応をするかというのは極めて大事なことだ。その意味でこの本は「買い」
と思うのだが、残念ながら編集人の思いに応えられた書き手は限られている。

| | Comments (4) | TrackBack (1)

2004.08.11

「内側」≠「当事者」

最近、やけにこんな場末のblogに訪問者が増えたと思ったら
『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』(城繁幸著 光文社)
関連で検索して来ている人が多いのだった。
「富士通」に「成果主義の崩壊」、きっと興味のある人が多いんでしょう。
せっかく来てくれた人に本のスタイルを批判した前回の書評ではなんなので、
読みにくさを我慢しつつ、改めて流し読みしてみた。

本来の目的通りに機能しない目標管理制度、横暴な権力装置としての人事部及び
人事官僚の専横と腐敗、無能な経営陣…。本書ではこれらが社内総無責任体制を
生み出し、優秀な若い人材ほど流出していく様子が手際よく描かれている。
その意味で、成果主義失敗のケーススタディとしての価値はある。

でも、残念ながらそれだけだ。
読後に残るのは「ふ~ん」という、事態の深刻さと比べるとあまりに軽い
印象なのである。

読後感のインパクトの薄さはおそらく、著者がいわゆる「社内評論家」的な
スタンスに立っていることが原因である。
本書を読む限り、著者自身が人事部に所属していた当時、現実の場面で改善の
糸口を探る努力をした様子はうかがえず、現在においても自分が悪しき制度の
運用に従事していたことへの自省もみられない。事実は知らないが、これでは
あなたは結局、自分が批判している対象と同じ穴のムジナじゃないの、と
読者に思われてもしかたがない。

ある大会社が倒産し、社内で切れ者とされた管理職が某新進企業の採用に
応募したときのことである。
優秀な彼は人事、役員面接を楽々パスし、最後に社長面接に臨んだ。
「なぜ、あなたの会社は倒産したんですか?」
社長にそう聞かれた彼は、世界経済情勢の分析からはじまって、市場動向、
経営戦略などの観点から、実に見事な解説を行ったという。しかし、社長は
「でも、会社が潰れたのは、ぼくはあなたのせいだと思うんだよね」
そう言って採用することをしなかった。自分とその会社(の倒産)との関わりに
ついて語られることがなかったからだ。
要は、いくら頭が良くても当事者意識のない奴はいらない、というわけである。

本書を読み終えたとき、そんな逸話を思い出した。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2004.07.31

オレ竜コーチング

今年、中日ドラゴンズの試合を見る楽しみは選手の成長・進化ぶりにある。
といっても以前のことはよく知らないのだが、シーズン当初は打撃が
ダメダメだった荒木が守備の自信を手がかりに飛躍したり、やはり守備固めで
神業を連発した英智がチャンスをつかんでレギュラーを奪取したり。
これは若い選手に限った傾向ではなく、立浪は野球人生最高の結果を残しそうだし、
ずっと日陰にいた柳沢が輝く姿は涙なしに語れない。
もちろん中にはパッとしない選手もいるが、総体的に見ると今年飛躍したといえる
選手が多いのではないか。

そんなわけで、昔読んだ落合博満著「コーチング―言葉と信念の魔術」を改めて
手にとってみた。
現在のドラゴンズの戦いぶりと照らし合わせると、実に興味深い一冊である。

100人の若い社員を預かったなら、その100人すべてに、何とか目鼻をつけさせたい。
そのためにはどうするか。若い人たちの最大なる長所と、欠点は何かを見る目を
つけさせることだ。(中略)目立つ長所があり、欠点がさほど仕事や人間関係に
影響しないものであれば、その長所をどんどん伸ばしてやればいい。それが自分の
長所であるという自覚を持てば持つほど、仕事や身のこなしにも自信があふれて
くる。そして、そんな人の欠点は、いつしか長所の陰に隠れてしまうことが多い。

こんな記述からは、守備という長所を活かして飛躍した荒木や英智の姿が思い浮かぶ。
他の球団だったら、二人は地味な守備要因で終わっていた可能性が高いと思う。
渡辺も頑張れよ! また、こんな自己分析も興味を引かれる。

プロ野球界の指導者には、3つのタイプがある。それは、その指導者がどの方向を
向いて話をしているかで決まる。選手のほうを向いて話をするのか、会社(チーム)に
向かって話をするのか、一般大衆(メディア)に向かって話をするのか。(中略)
私の評判が良くないのは、あまり会社や大衆に向かって話をしないからだ。私は、
少数の人間からは支持されても、会社の経営者や一般大衆からは支持される
タイプではない。

自分がマスコミに叩かれることなど、あらかじめお見通しだったようである。
ついでに関西で偉くなった人を揶揄しているように見えるのは気のせいか。
というように本書は色々な読み所があるのだが、何より素晴らしいのは
選手を一個の人間として尊重し、実際にグラウンドでプレーする彼らを
主体としてすべてを発想している点にある。指導者論として秀逸なのだ。

本書が発売されたのは2001年8月。当時、落合はキャンプ中の臨時コーチを除き
指導者経験がなかった。それにも関わらずこれほど実践的なコーチング論を記す
ことができたのは、きっとこの人は当てもないのに指導者になったときのことを
想定し、組織運営や選手指導の方法、リーダーシップの発揮などについて、
考えて考えて考え抜いてきたからだと思う。監督に就任したとき、指導者経験の
無さを指摘する向きもあったが、浪人時代も落合の心はグラウンドにあったのだ。
正真正銘の愛すべき野球バカであり、その思考の結実を見てハァハァしている
ファンの方にはぜひ一読をおすすめしたい。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

2004.07.26

光文社ペーパーバックス「日本語」の崩壊

富士通は日本の成果主義導入の先駆けとして知られるが、残念ながら
それがうまく機能しなかったケースとしてもよく話題にのぼる。
そこで「内側から見た富士通『成果主義』の崩壊」(城繁幸著 光文社)である。
「『成果主義』導入10年で、無残な『負け組』に転落した!」この会社の
元・人事部社員がそのダメダメな内幕を暴露した本とあれば、買わない
わけにはいかないだろう。
しかもペーパッバックススタイルで活字も横組み、価格も税込み999円と
くれば、新たな書籍パッケージの登場という点でも興味が湧く。

そんなわけで大いに期待を持って購入した本書ではあるが、結局20~30ページ
読んだところであえなく挫折した。
内容うんぬんの問題ではない。
文章中にやたら英単語が挿入されているため、つかえまくってしまうのだ。

無能なトップ top management とそれに群がった無能な管理職が、この制度を
使いこなせず、社員の士気 morale は低下。社内には、不満 complaint と嫉妬
jealousy が渦巻き、自殺者まで出るという惨状が出現してしまった。

こんな具合で食事中、飲み込むたびに小骨がのどに刺さるような感覚だ。
とても読書に集中できたものじゃない。あー、イラつく。

こんなバカげたまねをするのは著者の英語かぶれかと思ったらそうではなく、
光文社ペーパーバックスの特徴なんだそうである。
同シリーズの4つある特徴の一つとして、こんな説明が付いている。

「4、英語(あるいは他の外国語)混じりの『4重表記』
  これまでの日本語は世界でも類を見ない『3重表記』(ひらがな、カタカナ、
  漢字)の言葉でした。この特性を生かして、本書は英語(あるいは他の
  外国語)をそのまま取り入れた『4重表記』で書かれています。これは、
  いわば日本語表記の未来型です。」

日本語の後に、わざわざ同じ意味の英単語を挿入する意味がどこにあるのか?
ぼくにはさっぱりわからないし、出来上がった文章を読んでみて、こりゃダメだと
この本に関わった人たちは感じなかったのだろうか。
まして、本気でこれが日本語表記の未来型だと信じているのなら、出版業なんて
辞めちまえってことですよ(怒)。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.07.17

高橋がなり氏インタビュー

先日,不肖、私がまとめを担当した記事がWeb上に掲載されておりました。

一年間、指示を封印し 考えぐせをつけさせよ

高橋がなり氏が組織運営について鋭い考察を展開しています。
のぞいてみて下さいな。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.07.10

驚異?の新書検索&読書ガイド

昨年来、コンテンツの制作をお手伝いしてきた新書情報・検索サイト
新書マップ」がオープンしました。
毎日、朝日ではすでに大きく取り上げられています。
新聞よりBlogの方がはるかに発信が遅い、という突っ込みはさておき…

毎日
新書マップ:ぬくもりある読書案内 ウェブ公開始まる
調べたい項目を入力すると、約7000点の蔵書から目的にあう新書を
たちどころに選び出し、詳しい解説までつけてくれる。そんなビジュアルな
仮想書棚が実現した。30日からウェブ公開が始まった「新書マップ」
(http://shinshomap.info)は、機械的な検索とは違った「ぬくもりのある」
読書案内だ
(続きはこちら

朝日
新書・選書をネットで検索 7千冊を千のテーマに分類
 あるテーマに関連した新書・選書をすぐに探せるネット上の検索システム
「新書マップ」が完成し、30日から無料公開される。書名や著者名が分から
なくても、「連想検索」によって狙いの本を絞り込むことができる
(続きはこちら

検索システム、デザイン、コンテンツの豊富さという点でかなり面白い、
というか最初に検索すると、かなり驚く人が多いんじゃないかな。
本の好きな方、デザインに興味のある方はぜひのぞいてみて下さい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.07.03

評論家を10倍楽しく見る方法

別に誰かの悪口や裏話の暴露を商売にしても、そこに読者を引きつける芸が
あれば、それはそれで構わないとは思う。というか、それを否定したら自分
自身の仕事を否定するようなものでもあるし。
だから、江本孟紀が何を言おうと別に構わないのだが、久々に著書を読んで
みたら、あまりに面白いことを書いていたので二点だけ触れてみる。

プロ野球を10倍楽しく見る方法 2004年版
江本孟紀著 日本文芸社

この本の中で、彼の定番となった中日・落合監督を腐すくだりがある。
ちょっと長いが引用すると

「監督はチームの補佐役で、マネジメントが大きな仕事である。監督してチームを
引っ張っていく場合もあるが、そのときには“男気”が必要である。
 男気とは何か。それは、自腹で飯を奮発するとか、人のために寸暇を惜しんで
何かをしたとかも必要だが人を認める言動ができるかどうかも大切な要素である。
 また、大物という定義は(中略)身銭をきって大盤振る舞いするとか、
そのような“大物ぶり”が伝わってくるような人物を指すのだ」

おそらくライターが江本氏の話を書き飛ばした少々わかりにくい文章だが、
要するに監督としてチームを引っ張るリーダーシップとは、自腹で飯を奮発する
とか身銭をきって大盤振る舞いするようなことだと読める。おいおい…。
江本氏といえば、92年から2004年まで参議院議員を務めたお人である。そんな
人物のリーダーシップ像としてはあまりにお粗末であり、こんなプアーな認識で
国政に関わっていたかと思うと愕然とするばかり。いや、あまり重要なところに
関わっていたとは思えないんで、別にいいけど。大阪府民は賢明でしたね。

もう一点はこんなくだりである。

「先日、落合内閣のヘッドコーチ兼ピッチングコーチに就任した鈴木孝政に
会ったとき、彼は落合についてこう言っていた。
『あの人は(監督として)大丈夫ですよ』
彼は突っ張ってそう言っているようだったが、鈴木程度では簡単に落合に
ひねられてしまう。だから私は鈴木に念を押した。
『孝政、落合とケンカをしてでも、ビシビシ自分の意見を言わないと、
いっぺんでやられてしまうぞ』」

あんたか、 余 計 な 入 れ 知 恵 を し た の は …。

ちなみに本書では、昨年広島から阪神に移籍した金本が活躍したのは自分の
アドバイスが効いたおかげと自画自賛している。その内容とはこうだ。

「いろんな有象無象が近寄ってきて、“ああでもない”“こうでもない”と
言ってくるから注意しなさい」

自分が鈴木コーチにとっての「有象無象」だとは、考えが及ばなかったようだ。

※鈴木孝政コーチの件についてよく知らない方は、前回をご参照下さい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.06.16

サダムの時代

先週、知人のフォトジャーナリストがイラクへと旅立った。
十分な経験と実績を持っている人物ではあるが、日本人であることが
標的にされる理由となる現在、心から無事を願わずにはいられない。

先日の橋田信介氏の事件の際、小泉首相はだから危ない所に行くなと言ったのに、
という趣旨の発言をした。そこには、あんなところに行く奴は国家の迷惑だ、
自業自得の間抜けだみたいな印象を与え、世論を操作する意図が透けて見える。
彼らにとっての不都合な情報はできるだけ抑えたいだろうから、統制のきかない
フリーのジャーナリストなんぞにウロウロして欲しくないのだろう。
実際、サマワで露骨な情報統制が行われていることは、月刊現代7月号で
小野一光氏がレポートしている。

しかし情報統制の行き渡った社会がいかに唾棄すべき、ろくでもないものになるか。
皮肉なことに、それはフセイン政権下のイラクの不毛さが如実に表している。
サダムの時代(中央公論新社 相原清+久保健一+柳沢亨之)は、そんな
フセインの支配体制を、同時代を生きた3人の個人史から検証した一冊である。

焦点を当てられたのはフセインを支えたバース党の中級幹部と反体制作家、そして
クルド人の女性兵士という、壮絶な人生を歩いてきた人物たち。
フセインが国家権力を手中に収める過程の中で、それぞれがどのような思いで
権力に組み込まれ、あるいは戦い、ときに迎合してきたか。一筋縄では
いかない人生が、イラクの政治史とともに描写されている。

フセイン体制が崩壊した後もイラク情勢は混迷を深める一方のため、報道の
内容が現状のフォローばかりになりがちなのは仕方のない面もある。だが、
フセイン政権というかなりいびつな国家体制がなぜ成立し、そこで何が行われて
いたかを知ることは、日本がイラク問題にどう関わっていくかを考える上でも
欠かせない行為である。ブッシュのご機嫌だけ取ればいいというものではない。
本書はその参考になるのはもちろん、かなり徹底した取材がなされた成果として、
読み物としても優れた出来になっている。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.05.27

知らぬ間に

不詳、いや不肖、わたくしのインタビューが掲載されておりました。
普段とは逆に、自分が話を聞かれる側に立つと、かなりこっ恥ずかしいもんですね。
笑ってやってください。

それにしても、先に教えといてくれればいいのになぁ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.05.21

「文春不信」

週刊文春5月13日号の「新聞不信」というコーナーでは、イラク帰りの二人の
青年について、「あなたたちの意見など聞きたくない、なぜならあまりにもお粗末
だから、というのが世間の受け止め方ではないだろうか」と批判している。
「ジャーナリストの要件を満たしていないのだから、ジャーナリストなどと
名のるのはやめたまえ」というありがたいご託宣まである。

で、それから二週後、えらいえらいジャーナリスト様たちの作る雑誌が、
なかなか愉快な記事を掲載している。
題して「『収穫は併殺打だ』勝てない中日・落合監督『妄語録』」。
5月11日ヤクルト戦の井端のダブルプレーを指し「一番の収穫は井端の併殺打、
君たち(記者)にはわからなくて結構」と言った落合発言を揶揄した内容である。
だが、翌日に落合監督はその意図を記者に明かし、実際に井端は4打数3安打
結果を残して一転、ファンには神発言とされていることはご存知ないようなのだ。
20日発売の号(5月27日号)だから、〆切の関係で修正できなかったわけ
ではなく、要は掲載対象の新聞記事すら毎日チェックしていないのだろう。

また、同記事ではトーチューで「単独最下位に落ちた五月十一日から
『もう!!黙ってられない』と題する連載を始めた」とあるが、この連載はずっと
以前から続いている。少しバックナンバーをめくればすぐわかることなのだが…。
記者なのに「人の話を鵜呑みにしてはいけません」と教わりませんでちたか?

ついでに付け加えると、担当記者のコメントとしてフロントが「落合では客が
呼べない」とこぼしていると書いているが、(ゲーム差を大きく離されているわけ
ではないから)観客動員は基本的に経営、営業努力の問題。それはダイエーや
今年のパリーグを見ていればわかるだろうにと思うのだが、そんなことすら
わからない間抜けな記者が書いているのか、最初から貶めるのが目的だから
別にいいや、ってことなのか。

いずれにせよ、にわかファンでもすぐわかる明らかなミスが二つもある記事を
堂々と掲載してしまうのは、大上段からジャーナリズムを振り回す雑誌に
してはお粗末すぎるなぁ。小さな記事だから手を抜いてもいいやとか、
訴訟沙汰にならなきゃ何書いても構わん、ってものではないだろう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.05.16

秘術=目くらまし

原稿買い切りで書いた書籍が順調に版を重ねる一方、印税契約で書いた本は
苦戦中の今日この頃(涙)、自分への戒めの意味も込めて、普段なら
まず手を出さない本を買って読んでみた。
ベタを狙っているのが見え見えのタイトルとペンネーム、スカスカに間を
空けた本文の行間、金銭欲丸出しの文章、そしてあとがきで「ご協力を頂いた
皆さん」としてずらずら挙げられた名前を見て、まあそういう内容だろうと
ある程度想像はついたのだが。

普通の人が本を書いて怖いくらい儲かる秘術
わらし仙人 総合法令出版

本書の著者は書店店主にして、メルマガで8000人の読者を持ち、一年間で
1万冊の小冊子を受注したという。まだ、ろくにパソコンのキーを打てない
うちからメルマガを発行したり、小冊子を商売にしたり、やっていることは
かなり面白い人のようだ。その営業魂は見習うべきものがある。
しかし、本書については評価できる内容ではない。
「儲かる」といったタイトルがついた、最近売れ筋の本を読めばわざわざ本書を
読む必要はないだろう。どこかで聞いた話が多い、といってもよいだろうか。
想像がついたというのは、そういうことです。

本書に欠落しているのはCS(顧客満足)の視点である。
強力に「売る」ノウハウを追求し、それで「普通の本をベストセラーに」仕立て
上げたとして、本人は満足だろうが金出して買った客はたまったものではない。
本書を読んで、この著者の次作を買おうという人はどれだけいるだろう。
また、お仲間というだけでろくに読まず、あるいは本当の評価とは別に推薦の
言葉を垂れ流す周辺の方々も、いかがなものか。
いや、本気でいいと思って推薦しているのなら何も言うことはないのだが、
本当にそうなのか? 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.04.30

笑える犬の生活

やくみつるを起用する週刊プレイボーイの野球記事に語るべきことなど何も
ないのだが、相変わらず江本と金村がオレ竜に中身のない批判的コメントを
並べるのを見ると、彼らがどんな怨恨を抱いているのかなと想像だけは広がる。

で、金村義明先生の新刊「プロ野球勝てる監督負けるボス」である。
現在の12球団監督の指揮力分析と、過去に自分が関わった監督の実像、
そして将来の監督と目されている現役選手のリーダーシップについて書いた
彼なりの「監督論」という。
類書との違いは、現12球団監督の記述について、割かれたスペースが大きく
異なることだ。全球団分析をやるときはたいてい同じページ数を割くようになる。
「分析」ですから、特定の球団に肩入れしても何だし、ということで。
しかし、本書は阪神・岡田監督が13ページを割り当てる一方、その次に
ページ数が多いのはダイエー・王監督の7ページだから、いかに阪神の扱いが
突出しているかがわかる。日ハム・ヒルマン監督に至ってはわずか2ページ。
あまり興味がないようだ。ちなみに落合監督は5ページである。
これは過去の監督編でも同様で、星野仙一一人に25ページも費やしている。
その次に多いのが仰木彬の8ページ、長島茂雄などの5ページ。
著者の視線がどこに向いているかが、ここに現れている。

まだ未知数の岡田監督にそれほど語る材料があるのかと思って読むと、頁の
多くが著者自身との交遊ぶりとヨイショに費やされている。いや、交遊やヨイショを
書いてもいいのだが、エピソード自体があまり面白くないのと、そこから先に
あまり話が広がらないので読んでいて鼻白む。金村の交遊録などどうでもいい。
一応、分析らしき部分もあるが、主に雰囲気や結束といった抽象的な話が多く、
精緻な戦力分析などは見られない。「論」を名乗るには大ざっぱ過ぎると思う。
星野仙一の項についても同様の傾向だ。
二人への下手くそなラブレターを見せられているように思える。

一方、落合監督については「落合さんほど監督に向かない人はいない」と手厳しい。
その根拠は「徹底的な個人主義者だから」という。
一塁ベース上で「名古屋のマンションを買え」と言われたエピソードを挙げて「金の
亡者か」と失望したと人間性の問題を指摘。さらに鈴木孝政の「ヘッド」の肩書きを
はずしたことから「コーチへの接し方もおかしい」とし、横浜の臨時打撃コーチの結果、
「言い切り癖」などを挙げて優勝宣言の「信憑性には疑問符がつく」と断じる。
あとがきでも「オレ流を通した人間は、二軍選手を含めたすべての人間の気持ちが
絶対にわからない。いやわかろうともしないだろう」と再度批判している。

この落合へのマグマはどこから湧き出ているのかな、という視点で読んでいくと
「岡田さんが会長を務めた時代の労組選手会に『オレは入らない(中略)』とまで
言っていた人が、いざFA権を勝ち取った途端(中略)権利を行使して移籍した」
「中日ナインの間に大きな影響力を残す『星野流』を完全否定するところから
スタートした『落合流』だが(中略)どうにも先のビジョンが見えにくい」
といった記述が手がかりになりそうだ。
要するに、大事な大事な岡田さんや星野さんの敵、というわけだ。評論や分析
ではなく、個人の「好き・嫌い」「敵・味方」を彼は語っているのである。

つまりどうでもいい本ではあるのだが、一つ見逃せない点がある。
「就任直後の秋季キャンプでは『この時期は教えるな』という珍指令」
との記述があるが、本当は「選手が求めてくるまで教えるな」と言ったのであり、
要はこちらから押し付けるな、自分で考えさせろというのが本意だったはず。
その頃のスポーツ新聞を読んでいた人なら、誰でも知っていることだろう。
それを野球評論で食っている人間が知らないはずはない。ということは、これは
事実のわい曲である。モノ書いて食っている人間が一番やってはいけないことだ。
本書には、この手のためにする危うい記述がいくつか見られる。
バラエティで裏話を披露して笑いを取っているだけならいいが、まかり間違って
こういう人に発言力を持たせるようになってはいけない。
本人は発言力をつけて、いずれどこかの監督になるつもりらしいから。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.04.16

中国的成果主義

大きな本屋でしか見かけないので一般にはあまり馴染みがないが、
リクルートのワークス研究所が「Works」という雑誌を隔月で出している。
その最新号の特集が「中国―競争とマネジメントのダイナミズム」。
中国の人事マネジメントというと、現地で日本企業うまくいってねえな、
という話に終始しがちな昨今であるが、ここでは成果主義を先取りしている
先駆者として中国を位置づけ、現地取材を中心に深く切り込んでいる。

本誌で紹介している中国企業の人事戦略や評価制度を見ていくと、
かつての「鉄飯碗」の面影は見られない。能力の高い者に権限と報酬を与え、
そうでない者は脱落させていく厳しい成果主義的施策を導入しているのだが、
それは非情な仕組みでも単なる結果主義でもなく、人の成長と有為の人材の
獲得に力点が置かれているのが興味深い。
確かに、これらの先進事例から日本の会社が学ぶべき点は大いにある。

欲を言えば、取材先企業がIT関連企業中心になっているが、もっと他の
業種も見てみたい気はする。一応共産主義国家であるから党や組合と
面倒くさいことはないのかなといった興味もあるが、そこまでやると雑誌の
キャパを超え、書籍の世界に入ってしまうか。
ちなみにこの特集、全50ページもボリュームがあり、日系企業と関わりの
ある中国人による座談会や、現地化を進め健闘しているサントリーなど
日系企業の話も入っている。
成果主義を軸にした日中比較論としても読め、なかなか面白い。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2004.04.11

「国民全員が社長」なわけあるか!

久しぶりに書評です。

イタリア人の働き方 国民全員が社長の国
内田洋子 シルヴィオ・ピエールサンティ 光文社新書
☆☆

怠け者で女ったらしで酒飲んで遊んでばかりで、というイメージがある
イタリア人だが、実は自分にとっての人生の意味を心得ているだけで、
彼ら彼女らは人生を楽しむお金を得るために懸命に働く、という。
本書はそんなイタリア人の中で、「一人で仕事を始め、会社を興し、
実績を作り、名前が知られるようになった」人たちを紹介している。

紹介されるのは「VIPが我先に訪れるイタリア一の靴磨き」や「ヴェネツィア
一の水上タクシー運転手」、「本人の代わりにすべてを決めてくれる
パーソナル・ショッパー」といった個人事業的な仕事から、「世界最高の
ラガー・ビールを造るメーカー」などの零細企業経営者、年商1億ユーロ
(130億円)の「板金プレス業界のリーダー」である81歳の女性経営者等々。

取り上げられる人物はそれぞれユニークで、ビジネスの内容も面白い。
ただ、個人事業から中堅企業経営者、大企業の勤め人まで取り上げている
ため、よく言えばバラエティに富んでいるが、「イタリア人」以外の統一した
切り口がよく見えない。面白ければそれでも構わん、という考え方もアリだろう。
しかし、読後の胸クソ悪さは致命的だ。
たとえば、パーソナル・ショッパーの記事中にこんな記述がある。
「今日、何事もまずは外見ありき。他人は、その人の外見で中身を判断する
ものである。世の中に知られることなく、マスコミに取り上げられる
こともなくひっそりと暮らすのは価値のない人生、と思う人が大半である」
おいおい、正気か…。

登場する人物や仕事を紹介するにも、やれVIP御用達とかVIPでも
なかなか手に入らないとか、そんな表現の仕方がやたらと目に付く。
要するに、書き手のしょーもない価値観がそこに現れているわけだ。
で、肝心のイタリア人ならではの「働き方」の面白さや興味深さは、
あまり伝わってこないし、社会的背景まで知ることなど望むべくもない。
「人口5700万人の国で法人登録が2000万社。国民全員が社長の国・
イタリアの底力」という煽り文句はまあいいんだけど、普通に考えれば
中小零細企業が多くても、経営者より労働者の方が多いはずなわけで、
この数字の裏側には何かあると思うんだが、その点の記述は一切なし。
全員が社長だったら誰を雇うんだ。頼むから、少しは頭を使ってくれ。
安っぽい価値観で、興味深い事実の上っ面を撫で回して台無しにした一冊。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.04.01

なぜ人はブスを掴んでしまうのか?

美人(ブス)投票入門 ブス銘柄をつかまされないための13カ条
山本一郎@切込隊長 オーエス出版社
☆☆☆☆

本の帯をめくると女性キャスターのあられもない姿が現れる、ふざけた
表紙のこの本は、「株価が落ちそうになると懸命に材料を出す必死なブスの
あり様を、指を指し腹を抱えて笑いつつ」長期的に企業成長をのんびり眺めながら
資産形成をする方法を考える。
必然的に投下リソースの少ない個人投資家が株式投資で収益を上げる方法を
そんなものは知らん。
と1ページ使って言ってみたり、コラムのタイトルが「うんこ味のカレーの秘密」
だったり、やたらふざけた表現が目立つ。
この手の物言いは通例、ただただ下品になるか、厨房丸出しになるわけだが、
本書の場合、実に深く濃く面白い。「うんこ味のカレー」の味わいか?
それは、投資家として勝ち抜いてきた経験と、その背景にある尋常ではない
知識量や情報量、思考能力の高さに支えられたものと想像される。
決して子供が真似しちゃいけません。たいていは失敗するだろう。
たとえばこの著者、マスコミの推奨銘柄が信用できるかを確かめるために、
8年間もこの手の記事を収集・分析し続けた上で
「確実に損する仕組みが完成されているようなもの」
と結論付けるのだ。説得力があり、同時に口汚くなるのは必然かもしれない。
ふざけた表現とともに、内容そのものの魅力も非常に高い。
経営者の際どい話をそれとわかるようにしながら、ギリギリで訴訟リスクを
回避する書き方は、地雷原の中をひょいひょいとよけながら突っ走る
ような疾走感がある。
何のために走っているかは知らないが、投資入門的な扱いだけで終わらせては
もったいない、優れたビジネスエンターテイメント本とでも言うべき一冊。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.03.27

爆笑夫婦問題のモンダイ

爆笑夫婦問題
 幻冬舎文庫
☆☆☆

今、一番の売れっ子の爆笑問題は、しばらく辛酸をなめた時期がある。
デビューしてからすぐ注目されるようになったものの、所属事務所を
辞めて独立したために、仕事を干されてしまったのだ。
太田は家に引きこもり、田中はコンビニで生き生きと働く…。
そんなところから復活したのは、見かねた太田の妻が徒手空拳で事務所を
立ち上げ、二人をマネジメントし始めたからだった。
本書は爆笑太田の妻にして、所属事務所「タイタン」代表取締役、
太田光代が二人の出会いから現在(出版は2000年)までを記している。

もちろん経営なんてやったことはないから、本を買い込んで勉強しながら
会社設立し、自宅に電話を引くところからスタートしたという。
で、再び波に乗り始めたところで自ら「単独ライブ」を仕掛け、
テレビ番組のレギュラー獲得に結びつけたあたり、大した
マネジメント能力なのである。
爆笑問題の活躍ぶりは、このパートナーの力が非常に大きいことがわかる。

芸人という職業がどうやって成り立っているか興味があったので、思わず
買いこんだ一冊。その意味では面白かったのだけど、うーん…。
臆面もない二人の付き合い方を世間に露出することは、芸人という商売に
とっては、マイナスにしかならないような。
太田が家で歯の浮くようなセリフを自分の妻にかけるのは別にいいけれど、
そいつを世間に出せば芸人・太田のイメージを崩してしまう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)