特別編 アルゴノート社長 桐原文彦さん②
主体的に人生を送りたい人たちを支援する事業
経営コンサルタント会社に転職した桐原さんは3年目に大きな実績を上げ、自分が率いる部門を持つようになり、給与も役員の次に高い水準に昇給した。しかし、それが次のキャリアを模索するきっかけになったというから面白い。
「もともと怠け者なので楽な環境にいるとダメになってしまうんですよ。経営に関することは一通り学んだし、もう独立しても大丈夫だろう。そう思ったのですが、相変わらず自分が何をやりたいのかはわからなかった。
そんな時に思いついたのが、ニュージーランドへの移住です。私は学生時代からヨットをやっていて、当時大前研一氏などがニュージーランドの経済改革を賞賛してもいたので、移住で公私ともにハッピーになれるのではと考えた。ちょうど子供が生まれるタイミングでもあったので、『家族で移住だ!』と決めました。
とはいえ伝手は全くなく、あちこちで『ニュージーランドに行きたい』と話していたら、同僚の顧客に現地に印刷会社を持っている企業があることがわかりました。オーナーに話を聞きに行くと『大赤字なのでもうクローズする』というので、『ぜひ僕に経営をやらせて下さい』と頼み込み、ニュージーランドでの仕事が決まりました。
ところが雇われ経営者のはずが、いざ現地へ行くと『やっぱりあの会社いらないからあんた買うて!』とオーナーにはしごをはずされてしまった。日本の家財道具はすべて処分し、みんなに『夢の実現だ!』とさんざん宣伝して移住してきた手前、後には引けません。
しかも、現地へ行って初めてわかったのですが、隠れた負債はたくさんあるわ、まともに監査を受けていないわ、等とんでもない会社でした。最初に会社を食い物にしていた社員を全員解雇したところいきなり訴えられたり、未払いの請求書がいっぱい出てきたり、ずっと会計士や弁護士と打合せの日々です。
業務はキンコーズのような内容です。思いがけないトラブルに見舞われましたが、自分で店舗の内装を全部改装しなんとかオープンにこぎつけました。でも、オープン3日目に店を閉めて一息ついたとき、急に『何で俺はこんなことをしているんだろう』との思いが湧いてきました。オープンするまでは苦しいけど楽しかったのですが、今は全然楽しくない。
そのときにはじめてわかったことがあります。自分は独立することそのものではなく、いつもワクワクして毎日を過ごすため、自分が主体的に生きる方法を選択したいのだと。こんなことをしていてはいけない。もっと自分のやりたいことを探さなければ――。でも、依然探したってわからないわけですよ」
結局、ニュージーランドでは2年間無給で働き、設備の不調をきっかけに負債をすべて清算して日本に戻った。帰国後はベンチャー企業で新規事業開発責任者を務め、リサイクル関連のFCの立ち上げを手がけた後、アルゴノートを設立する。
「ニュージーランドで資金繰りを経験し、リサイクル事業の立ち上げで投資回収がどういうことかがわかりました。これで経営についてだいたいわかりましたが、相変わらず自分は何をやりたいかはわからない。そこで考え方を180度転換したんです。結局、やりたいことなどわからない。でも自分みたいな人間はいっぱいいるだろう。だったら、そういう人たちを支援する仕事をしようと。
主体的に人生を選び取りたい人たちを相手に、法人の意向に左右されず、企業と対等に契約して仕事をしていく生き方を応援する。そんな事業をやりたいと思って始めたのがアルゴノートなんです」
人気blogランキングに参加しました。応援をよろしくお願いいたします。
| 固定リンク