HRD(人材育成・採用)コンサルタント 阿部淳一郎さん⑥
ただ、『そのかわり、学生向けの新規ビジネスを立ち上げて欲しい』と言われました。パソコン一台渡されて、『何か考えて』って。事業開発なんて経験がありませんから、何をどうしたらいいのかわかりません。でも、成果を出さないと明日はないですから、必死で取り組みましたよ。ネットワークはあったので色々インタビューをして、最終的に大学内で開催する学生向け合同企業説明会の企画を考えました。
通常、合同説明会は企業がブースを出して学生は話を聞いておしまいですが、ここでは事前に会社探しの方法などの勉強会を開催しました。企業側から見ると、事前に鍛えられ、自分の会社を勉強した学生が話を聞きにくるようにしたわけです。また、大学にはなかなか入り込めないのですが、人脈をたどってこれもクリアしました。この企画はとてもブレイクしましたね。
また、インターンシップ学生受け入れのコーディネートも担当しました。これも評判がよくて、担当した学生の大学から『インターンシップに行ってから学生がみちがえるように変わった。何をやっているのか教えて欲しい』とリサーチが来た。基本的に大学は新卒派遣に対して否定的なので、大学から人材派遣会社にアプローチされることはないんです。それで役員の方たちが驚いて、学生向けの仕事は全部任されるようになりました。
結局、最初の契約とはまったく別の業務ばかりやっていたわけですが、今は経験をとった方がいいと考えて取り組んだら結果がついてきて、二年目からは報酬も上がりました。また、一年目は時間だけはあったのでのでさまざまなところへ顔を出していたら、それが二年目に花開きました。人材関連会社で少しだけ積んだ経験をもとに、ある会社で『私、経験がありますから』という顔をして、採用のフローを全部つくりかえたんです。そうしたら、目標の採用人数を達成した上に、辞退率をほぼゼロにすることができました。
やり方は、さっきも言いましたが時間だけはあったので無茶苦茶本を読んで調べ、講演会に行って話を聞き、すごい人がいたら『教えてください』と頭を下げてお願いし、必死で勉強しました。人材系の方は基本的に人を育てるのが好きだから、講演会が終わった後にスタバで8時間もレクチャーしてくれる人もいました。そうやって学んだことを実践していったわけです」
一方、本来やりたかった講師の仕事はどうしていたのだろうか。
「講師の仕事はエージェントに登録して、その会社が取ってきた仕事に講師が派遣されるタレントのような形でやっています。デビュー前にはオーディションもあって、90分間営業マンの前で話をするのですが、僕はここで緊張し過ぎて大失敗しました。途中で『もういいから』と止められたぐらいですから。でも、『僕にはまだ力がないので勉強させて下さい』と謙虚にお願いしてやらせてもらっているうちに、少しずつ依頼が増えていきました。
コンサルタントや講師の仕事は形がありませんから、経験を見られます。実績がある人は『大丈夫そうだな』と判断される。そこでプロフィールに実績を増やすため、『ただでもいいですからやらせて下さい』と言っていました。実際、3000円で講師の仕事を引き受けたこともあります。仕事が終わった後、スタッフと飲みにいってすぐ3000円は消えましたけど、ここでもお金ではなく経験を取りにいったわけです」
その後、紆余曲折を経て講師のオファーは年間200本程度くるようになっている。
| 固定リンク